
DX化が進む中、広告や宣伝に限らず、情報伝達に動画を活用する場面が増えています。これはペーパーレス化の一環と言えますが、動画を外部の業者に発注するとコストが嵩むのも事実です。
そこで、「人材育成にあたって動画を活用したいけれど、その手間やコストは抑えたい」という企業の担当者に対し、動画制作の内製化について深掘りしていきます。
目次
動画制作の現状と課題

テキストや静止画よりも多くの情報を伝達できる動画は、DX推進の手段として有効な選択肢の一つです。しかし、その制作においては課題も多く見受けられます。
動画制作は外注が当たり前?
動画制作は、社内で動画に精通している人材がいない場合、外部の業者に発注するのが一般的です。実際、動画制作は専門的な知識とスキルを必要とします。
またカメラをはじめ、照明やマイクなどの専門機材、スタジオ、編集設備といった制作環境の整備も必要です。専門業者はそうした環境の充実や熟練の技術を兼ね揃えているので、動画制作がスムーズに進みやすいと言えます。
ただそうは言っても、外注コストに見合った効果を得られていない企業も多いのが現状です。そのため、動画制作を内製化してコストを削減したいと考える担当者は少なくありません。
動画制作を内製化するメリット・デメリット

動画制作の内製化は一長一短あるため、目先のコスト削減だけに捉われて内製化すると、かえって生産性を低下させる恐れがあります。そのため、まずは内製化のメリットとデメリットをきちんと把握しましょう。
動画制作を内製化するメリット
- 動画制作を内製化することで、社内で動画制作に精通した人材を育成できます。これにより、外部の制作会社に頼らず効率的かつ迅速に動画を作成することが可能になるので、制作毎に発生していたコストを削減できます。
- 自社のブランドやサービスに対する理解が深まり、より効果的な動画制作が可能になります。これは、社内の従業員どうしだとコミュニケーションがとりやすいため、動画の担当者は制作の意図・企業のビジョン・サービスの価値などを明確に把握しやすいからです。
またそれらが反映された動画は、顧客へのアピールでも社内での情報共有でも、一貫性のある有効な情報伝達ができるでしょう。 - 長期的な視点でいえば、外注コストの削減が可能です。たとえば、企業として定期的に動画コンテンツが必要な場合、外注し続けると当然、そのコストは膨らみます。
もちろん、内製化する場合も初期投資や設備の導入など、一定のコストはかかります。しかし、動画素材や編集データが社内に蓄積されることで、柔軟な制作ができるようになります。
自社である程度の品質が担保できれば、その後のコストはかかりませんので、内製化は長期的には有効な対策と言えます。
動画制作を内製化するデメリット
- 動画の担当者に十分な専門知識や経験が備わっていない場合、たとえば撮影や映像の編集・効果的なストーリーテリングなど、高品質な動画の制作は難しいかもしれません。また時間と労力のかかる作業なので、社内の人材が既存の業務と並行して携わる場合、作業負担によるストレスを抱える可能性があります。
- 先ほども触れましたが、動画制作には編集ソフトウェアや映像を制作する機材・スタジオスペースなど、制作環境が整っている方が便利です。これらのリソースが不足している場合、高価なものを選ぶ必要はありませんが、一定のコストは必ずかかります。
- 外部の業者は専門的なスキルと経験を持っており、初心者と比較すると制作技術の差が否めません。社内の人材がスキルを習得できるようになるまでは、教育コストが必要不可欠です。
このように、動画制作を内製化するには一長一短あるため、現在の外注コストを抑えたくても熟考することが大切です。
動画制作の費用対効果を検証

それでは実際に動画制作にはどのくらいのコストがかかるのでしょうか。平均的な費用対効果を検証します。
動画制作を外注する場合の費用相場
動画制作と一言でいっても、制作会社はたくさんあり、それぞれプランもバラバラです。ネット上で散見される外注業者を比較すると、概ね30秒のPR動画で5万円〜30万円くらいが一般的な費用相場と言えます。
ただ業者によってはテロップやナレーション・音源などをオプション費用としていたり、集客のためにプロデューサーやディレクション費用が加わると数十万円から数百万円かかったりします。一方、社内で使用する簡易的なものであれば格安な場合もあり、正直なところ、動画の内容によって金額が変わるというのが実態でしょう。
そのため、動画制作を外注する場合は、動画の目的や活用場面・内製化のメリットなどと比較して柔軟な選択をすることが重要です。
動画制作の内製化が効果的なケースとは?

動画制作を内製化する場合、どのような目的・場面での活用なら有効と言えるのでしょうか。そこで、5つの場面別に内製化が効果的に働くケースを解説します。
社内ツールの使い方
製造や管理部門が従業員向けに作るマニュアル動画や人事がeラーニングの使い方などを社員教育用に作る場合、社内の人材やリソースを活用した方がスムーズと言えます。たとえば編集や加工を行うとき、外部の業者と違ってコミュニケーションコストを抑えることが可能です。
もちろん、初心者は制作に時間がかかるかもしれません。また高品質な動画を作るには難易度が高いと思いますが、クオリティは実務経験に比例して上がっていくので、内製化によるコスト削減の効果は十分期待できます。
営業ノウハウの共有
営業や企画部門が社員教育として営業ノウハウを共有するために動画を作る場合も、社内向けなので気軽に制作できるのではないでしょうか。実際、この場合に大切なことは動画のクオリティよりも、見る側に内容がきちんと伝わるかどうかです。
それに昨今は編集ソフトウェアの品質が上がっているので、内製化によるコスト削減は十分可能と言えます。
社内プレゼン
社内プレゼンは何かを導入したり、予算を増やしたりと、稟議を通すために重要な場です。そのため、動画を活用するなら、見る側の審査ポイントを掴む内容とクオリティが求められます。
ただ機材や設備にこだわらなくても、内容が審査基準をクリアしていれば問題ありません。また制作時間や動画のクオリティは経験を積みながらレベルアップするので、内製化によるコスト削減を目指すのが理想です。
社外プレゼン
社外プレゼンは、内容はもちろん重視されますが、見た目も非常に重要です。とりわけ商品・サービスのPRであれば、その魅力を最大限に引き出すことで、契約に向けて前進します。
とはいえ、編集ソフトウェアを使いこなせれば品質は担保できます。たとえばPowerPointアニメーションやモーショングラフィックスの実践により、ケースバイケースではあるものの、外部の業者に劣らない動画制作が可能です。
マーケティング・広報
マーケティングや広報は営業部門なら新規顧客の開拓、人事なら新規採用に向けた取り組みというように、幅広い意味で会社のアピールを社外に向けて発信します。たとえば、商品やサービスのFAQや社員のインタビュー動画・会社概要の説明など。
そのため、内容のストーリー性や魅力度はもちろん、クオリティの高さが求められます。おそらく、こうした動画制作はコスト面を理由に内製化したいけれど、社内の人材やリソース不足から外注している企業が多いのではないでしょうか。
ただ社内で動画を制作する担当者がスキルアップすることや制作環境を充実させるための予算を増やすなど、内製化の初期コストを惜しまなければ、将来的には外注コストが不要になります。
成功事例から紐解く動画制作の内製化
ここでは動画制作の内製化に成功した事例をご紹介します。
金融会社の事例
某金融会社はAdobeツールを活用し、企業のSNSに活用する動画制作を内製化しました。担当の女性社員は元々営業事務でしたが、リスキリングによってデザイナー技術を身につけることに成功したそうです。
最初は映像のカットや簡単なテロップを入れる程度でしたが、徐々にクオリティが向上し、社内外からの評価が上がっていったとのこと。
このように、従業員一人ひとりがスキルアップすることで、企業のDX化はその実現に向けて前進します。
Adobe社ホームページAdobe Premiere Pro活用事例から引用:https://www.adobe.com/jp/creativecloud/business/teams/video-work.html
動画制作ができる人材の育成

ここまで動画制作の内製化の是非について検証してまいりましたが、企業として大切なことは、DX推進のために動画制作ができる人材を増やすことです。テレビCMや映画の予告編のような技術に凝った動画でなくても、スピーディーに動画を制作できる人材がいれば、外注コストを削減できます。
そして、動画制作ができる人材を育成するポイントはリスキリングです。Winスクールでは動画制作の技術を身につける講座をご用意しております。
Premiere Pro・CC講座
Premiere ProはAbobe社の動画編集ソフトで映像制作のプロの方々も多く使用していますが、初心者でも基礎からしっかり学ぶことで技術を身につけることが可能です。自社のマーケティングに動画を活用したい方にはぴったりで、新たな学びにチャレンジする新鮮さや作品ができ上がる楽しさを実感できる講座と言えます。
https://www.winschool.jp/guidance/design/premiere.html
PowerPointアニメーション実践
WordやExcelと並んでパソコンの基本として多くの方が使っているPowerPoint。しかし、PowerPointだけでPCの操作動画を撮影できる機能をはじめ、オンライン商談やプレゼンに使える技術が身に付きます。簡単な資料づくりなど、未経験者がDXに取り組むはじめの一歩としておすすめです。
https://www.winschool.jp/guidance/business/ppt_anime.html
モーショングラフィックス実習
Adobe社の映像制作ソフトAfter Effectsなどを使ってモーショングラフィックスを実践する講座です。モーショングラフィックスとはロゴや文字・図形・画像などに動きや音を加えて動画することで、たとえば動画のタイトルやあるシーンを目立たせたいときに効果的です。比較的、上級者向けなので本格的なPR動画を作りたい方などに向いています。
https://www.winschool.jp/guidance/design/motion_graphics.html
おわりにーー
現代のビジネス環境において、動画は重要なコミュニケーションツールの一つです。動画制作の内製化はハードルが高いと感じる方がいるかもしれませんが、その目的や活用場面によって、チャレンジする価値は十分あります。
またリスキリングを導入して動画制作の技術を身につけることはDX推進につながります。人材育成の一環としても動画制作の内製化の是非を見極めていきましょう。