DX(デジタルトランスフォーメーション)はIT業界に限らず、製造業や建設業、さらにはサービス業など、あらゆる業種においてその必要性が高まっています。
とりわけDXをすでに導入している企業は、さらなる成長分野の開拓やイノベーションが期待できるビジネス戦略を立てたいところではないでしょうか?
一方で、作業の自動化によりデータ収集やその分析の効率は改善されたもののデータをどう活用すれば継続的な売上アップやコスト削減につながるのか見出せていない……という課題を抱える企業は少なくないと思います。
そこで必要となるのがデータサイエンスの知識・スキルです。
データサイエンスとは、大量のデータから価値のある情報や関連性などを導き出す学問的な分野です。統計学や数学などの知識を活用してビジネスに有効な結論や知見を導き出し、意思決定をサポートするために使用されます。
たとえば、企業の業務システムやアンケートなどで集約したさまざまなデータから、潜在的な知見や価値を明らかにして、社会課題や経営課題の解決に役立てるのが特徴です。
Winスクールではテクノプロ・デザイン社(株式会社テクノプロ)とコラボレーションして、「製造業DX推進 データ分析・利活用プロセス&事例解説セミナー」を開催することになりました。
この記事では当セミナーで登壇する講師、テクノプロ・デザイン社の後藤拓海氏(以下、後藤さん)と橋本友幸氏(以下、橋本さん)にデータサイエンスの世界についてインタビューした様子をお伝えします。
セミナーの参加を検討されている方はもちろん、データ分析からその利活用による新たな成長分野の開拓を考えている企業の経営者様・各部署の担当者様へ、データ利活用の(DXのリアルな)現場を知っていただけると幸いです!
目次
講師紹介
データサイエンスのプロとして多彩な経験を持つ二人の講師の魅力に迫ります。
セミナー開催にあたり、受講者や本記事の読者に向けて自己紹介をお願いします。
橋本さん
大学卒業後、医療機器メーカーのコネクター制御や組み込みソフトウェアに1年半ほど携わった後、データサイエンスの研修を受けました。研修では大手不動産のECサイトの分析やビッグデータの運用、画像系のアノテーションに関わりました。
その後はAIエンジニアをベースとした指導や教育コンテンツの考案、営業同行を経て2020年以降は各案件に集中する形で業務にあたっています。基本的な業務はプロジェクトマネージャーとメンバーの橋渡しをするような役割です。
他にも営業補佐としてマーケティングを学び、データサイエンス課に配属されてからはBI業務や講師、プリセールスなど、パラレルに活動しています。
データサイエンティストはよりコミュニケーション力やマネジメント力を求められますが、100人単位の飲み会の幹事をやり遂げた経験も役に立っていると思います(笑)。
後藤さん
私は元々アニメーション制作会社からプログラミングスクールでC言語やJavaを学び、弊社には組み込みエンジニアとして入社しました。社内外での研修受講を経てデータサイエンティストに舵を切ることになりました。現在は社内教育や他社教育を中心とした研修講師を務めています。
社内教育の例としましては、画像認識・ウェブアプリケーション・自然言語処理・異常検知・BIなどの分野でデータサイエンスの研修を行っているので、その基礎に関しては講師として一通りお伝えできるかと思っています。
一般的なエンジニアの方の経歴とはかなりギャップがあると思います(笑)。実際、プログラミングに特化するほどの専門性が強くあったわけではなかったので、研修期間はかなり苦労しました。最もその経験があったからこそ、学ぶ側が何に苦戦するのか?どの部分から始めれば理解しやすいのか?といったことを、きちんと学べました。
現在行っている社内研修の主な実績は、社外研修でPythonのコーディングとアナリストとしての分析業務を学んできた社員に対して、さらに専門性を絞って市場価値やお客様のニーズに紐づく内容を実習を含めて行っていることです。
データサイエンティストはビジネスの価値(お客様が求める価値)に対して技術をどう変換していくかということに意識を向ける必要がありますが、その辺りは数的処理・統計・機械学習などの知識に偏らない幅広い視点が身につくように教えることを心がけています。
セミナー概要〜DXの実現に欠かせないデータ利活用
「製造業DX推進 データ分析・利活用プロセス&事例解説セミナー」では、具体的にどのようなことが学べるのでしょうか。
今回のセミナー内容について教えてください。
基本的にはデータ利活用についてお伝えします。データ利活用には、「利益につながるように」という意味での利用とそのための情報を効率的に引き出して活用するという2つの概念があり、これらの内容を深めていくセミナーです。
DXの実現にデータ利活用は欠かせない手段なので、まずはその定義や必要な3つのスキル(ビジネス・サイエンス・エンジニアリング)について解説します。たとえば、なぜPythonが使われているのか?やフレームワーク(CRISP-DM)に沿って、実務に落とし込むポイントをお伝えします。
またデータ利活用の事例(月ごとの集計作業ツールの作成・生産ラインの見える化・リモートワークの感情分析)もご紹介しますので、経営企画や人事(キャリア形成)に紐づけができる内容です。 その他、データ利活用の今後についても市場環境や技術の変遷を中心に語らせていただければと思っています。
詳細な事例も交えた、実務への生かし方がわかる内容だと感じましたが、セミナーで使う資料はどのような経緯で作られたのですか?
弊社はデータサイエンティストを派遣ないし案件の請負という形で仕事をさせていただいているのですが、データを使って何ができるのかをイメージしづらいお客様が多い状況です。もちろん、資料化したものを提供しておりますが、それは決まりきったものではありません。そのため、お客様のニーズに合わせて色々と組み合わせる必要があります。
それならば、お客様にもデータ利活用の概念を知っていただき、その課題を私たちでお手伝いできないかなと思いました。いわゆるプリセールス的な形です。なので、セミナーで使う資料はその導入としての内容になっています。
元々は「DXって何?という研修」と「AI活用の勘所を解説する研修」、そして今回お伝えする内容の3つを合わせた製造業の皆様に向けたDX関連セミナーとして売り出しているのですが、昨年度も何度か実施して「〇〇のデータは使えない。〇〇は使えるデータだ」という理解やデータ利活用で課題解決できるどうかを導くキッカケになったとご好評いただいております。
こんな方におすすめのセミナーです
一言にDXといってもDXには段階があります。今回のセミナーはどのような方が受講することで実務に落とし込めるのでしょうか。
今回のセミナーはどのような方におすすめですか?
DXは全ての企業に当てはまるので、どんな方にも聞いていただきたい内容ではあるのですが、とりわけデータ利活用に直接関わっている方におすすめです。
先ほどお伝えしたように、「データ利活用は実際に何をするのか」や「どのようなスキルを必要とするのか」が主な内容になっております。そういう意味では、すでにWinスクールで学ばれている方にはピッタリかもしれません。
現在、政府が推進していることもありリスキリングが話題になっておりますが、全ての方がプログラミングをやらなければいけないかといったら、それは違うと思います。ただ「このくらいは知っておくべきことだな」ということ(データサイエンティストは何ができるのか?や人材サービスとしてこうしたセールスポイントがある!)が基盤になっているので、データサイエンティストに限らず色々な方が実務に生かせるというセミナー内容になっています。
事例紹介〜データ利活用の成功事例
データ利活用はあくまで手段の一つ。何を持って成功とするかは企業によって異なりますが、ここでは講師のお二人が関わった事例をご紹介します。
データ利活用の成功事例またはデータ利活用について印象的な事例がありましたら教えてください。
お客様がメリットを感じてくれればどの案件も成功といえば成功なのですが、私の業務で言うと、PoC(概念検証)というものがあります。
PoCとは、新しい手法の実現可能性を発掘するために、試作の開発前に行う検証のことです。 データ分析によって「あれこんな特徴があったのか」という部分を見つけて深掘りすると、仮説を立てることができます。お客様側ではなかなか気づけない部分が多いので、それを伝えることで喜んでくださいます。
データ利活用における成功を定義するのは難しいのですが、データ分析は一回限りで終わるわけではありません。そのため、フレームワークに沿って実務に落とし込み、データの良し悪しや保存方法を見直すこともデータ利活用に含まれます。
そう考えると、課題解決が直接できなかった場合でも、ビジネス課題とかデータを見直すことで、目標の再設定や不足データの収集といった次の行動が明確になります。目に見える成果だけでなく、こうした無形効果もお客様は価値を感じてくださっている自負があります。
また具体的な事例として、弊社では毎年お客様の満足度を図るためにアンケートを取らせていただいているのですが、その可視化と次年度に向けてどこに注力していくかの参考になるようなデータを会社ごとに集計しています。
実際、データはあってもそのデータをどういう形にしてあげたら良いか、お客様側では気づけない場合が少なくない現状です。そのため、課題をヒアリングした上で、まずはデータと紐づけして見える形にすることが重要です。
たとえば製造業のお客様であれば、この工場では〇〇の製品を作っていて、そのために〇〇な機械を稼働しているとします。そのとき、異常やロスを事前にわかるようにしたいとか機械の稼働効率もっと良くしたいなど、どんな課題があって、それを解決するにはどうすれば良いのかを数学や統計知識・プログラミングスキルによって可視化できるのが成果だと思っています。
トレンドや業界の動きを知るための方法
データサイエンティストは単に目の前のデータと向き合うだけではなく、視点を高めさまざまな思考を凝らす必要があります。またそのためには、トレンドや業界の動きを知ることも大切です。
近年の技術トレンドや業界の動きについて、どのように情報収集されていますか?
何か特別なツールを使っているわけではなく、企業や市場を調べるときは会社四季報の業界地図をよく見ています。それだけで詳細な情報を掴むのは難しいのですが、技術的な強みを生かした教育に力を入れているので、その意味でも各企業の技術がどう使われているのかやトレンドに関心を持つことが大事だと思っています。
私は日経業界地図を毎年購入しています。トレンドがわかりやすいことや事実確認ができるメリットがあります。あとは展示会に行って、実際に製品についての質問をするのも有効です。担当者の生の声が聞けますからね。
講師に聞いた「もっと学びたくなる学び」とは?
リスキリング(学び直し)に関心を寄せる方が増える一方、学ぶことへのハードルを感じている方もいらっしゃいます。講師のお二人は「学び」についてどのように考えているのでしょうか。
Winスクールでは「もっと学びたくなる学び」という合言葉がありますが、お二人はそこから、どのような学びを想像されますか?
私は「学ぶ」という行動に関しては、正直、勉強ではなく情報収集だと思っています。今の社会がどういう状況にあるかや多様性、どういう知識が自分の業務に生かせるのかなど、それらを知ろうとする手段ですね。
それから、誰のために学ぶか?という考えも大切です。勉強って自分のためにしても楽しくないというか、人のお困りごとを解決するために情報を得るとか、人に感謝されることが生きがいや喜びにつながると思っています。
またそのために、ネットワークを広げたり、検索方法を調べて色々と活用したりすることが重要だと考えています。
たまに哲学を勉強すると「何言ってんだ?」と難しく感じることはありますが、経験とすり合わせると、「あ、そう言うことか」と腑に落ちることがあります。
「スマホを取り出して調べる」その行動一つで人生が変わるので、学びによって得られるものの楽しさを知ってもらえたらと思いますね。
データ分析は見えないものを見えるようにすることなので、データは利活用すればするほど、新たな発見があります。
学びたくなるということはそもそも好奇心から始まっているので、たとえば「自分の中で何がわかっていないんだろう」とか「どういうことを知ったら面白いだろう」と考えることで、「勉強しなきゃいけない(have to)」が「勉強したい(want to)」に変わると思います。
データ分析に限らず、何かを学び始めると、本当それまで知らなかったものがどんどん自分の中に入ってくるので面白いです。
日々の業務をこなしているだけでは、自然に入ってくる情報はどうしても限られてしまいます。なので、自分からいろいろ調べてみて情報を経験値に変えていくというか、技術ありきで考えるよりも、学ぶことで何ができるようになるのか?という思考を養っていくのが良いと思います。
セミナーを受講される皆様へ
最後に、セミナーを受講される方にメッセージをお願いします。
データ利活用とかデータサイエンスと聞くと難しそうに聞こえるかもしれませんが、今回のセミナーでは初めて聞く方に向けても理解しやすいようにお伝えできればと思っています。ので、ぜひ肩肘張らずに受講いただけると嬉しいです。
データ利活用というのは知識や経験、直感などが組み合わさってつくられた学問というか仕事だと思っています。なので、私からは自らの経験から皆様がモヤモヤする課題に対してお答えをすることができたらと思っています。
- データとツールはあるけれど、その活用方法が不透明
- データの意味を理解し、ビジネス戦略に組み込むスキルが不足している
こうした状況を打開するには、ビジネスとITをつなぐ橋渡し役となる人材が必要であり、その人材がデータサイエンティストと言えます。
データ分析は単なる数値解釈ではなく、そのデータがビジネスにどう影響するのかを明確にすることが重要です。日本のものづくりを支える製造業においては今後、データサイエンスによる成長戦略が欠かせません。
DX推進の牽引役としてぜひデータ利活用のための知識・スキル習得(リスキリング)にチャレンジしてみてください。