いま多くの企業が取り組むべき経営戦略の一つとして叫ばれているDX(デジタルトランスフォーメーション)。とりわけ製造業では、熟練の技術者やデジタル人材の不足により、非効率な生産工程や人的ミスの発生など、多くの課題を抱えています。
ただ、各企業の担当者はDX推進の必要性を感じているものの、実際に何をどうすれば良いかわからない…というのが現状ではないでしょうか。
そこで本記事では、主に製造業のDX推進に焦点を当て、効果的な人材育成の方法をご紹介いたします。
目次
製造業のDXが進まない本当の理由
DX推進の重要性は理解している
多くの企業はおそらく、DXの重要性をすでに理解していると思います。実際、デジタル技術の活用により迅速な意思決定や顧客へのサービス向上など、市場の変化に柔軟な対応が可能となるので経営リスクを低減できるメリットはとても魅力的なはずです。しかし、製造業を中心に、現場レベルや中小企業のDX推進度はまだまだ低い状況と言えます。
製造業のDXが進まない根本的な原因
製造業のDX推進度が低い根本的な課題…それは、DXを推進するデジタル人材の不足です。いざ始めようと思っても、社内でDX推進担当がいなかったり、現場で働く各社員のデジタルスキル・リテラシーの不足が要因となっています。この課題は、単なるDX推進セミナーへの参加や特定の部署の生産性を高めるだけでは、解決することは難しいでしょう。そのため、全社的な生産性アップが求められています。
生産性のそもそも論
そもそも生産性とは、投資に対する効果を指します。たとえば、製品を5台製造するのに50人のスタッフが必要で、それが30人のスタッフで10台製造できれば、利益は大幅に改善します。反対に、スタッフや設備が増えても製造台数が大きく変わらなかったら、生産性は低いと言えます。つまり、生産性が上がれば市場の需要に応じて適切な供給が可能となります。
DX推進のカギは人材育成
企業全体の生産性を高めるために、各社がいま最も取り組むべきことは人材育成です。社員一人ひとりのデジタルスキル・リテラシーが上がれば、DXを着実に進めることができます。多くの企業が抱えるDXの課題を解決するカギは、人への投資が握っているといっても過言ではありません。
DX推進のための効果的な人材育成
人材育成によるDX推進ロードマップ
ではどのように効果的な人材育成に取り組めるでしょうか?
人材育成は計画的かつ効率よく行う必要があります。
下記は計画的な人材育成によるDX推進のロードマップです。一つ一つ詳しく見ていきましょう。
①現状把握
DXはじめの一歩は現状把握(社員一人ひとりのデジタルスキルを把握すること)です。その方法としては、たとえばスキルチェックを実施して、企業の課題解決に必要なスキルとのギャップを可視化します。
課題例:熟練技術者の退職で生産効率が下がっている。とりわけ生産ラインにおいて不良品の検査に時間がかかり、納期が長引くことによるコストパフォーマンスの低下が利益を圧迫している。
課題解決の方法:データ分析やモニタリングによる作業の自動化や効率化
現状把握:社員のデジタルデータ分析やプログラミングに対する知識・技能をテスト形式で確認
②スキルチェックからわかる課題の可視化
スキルチェックでは多角的な評価を行い、その結果に基づいて、何の知識・技能がどのくらい足りないのかを数値化またはデータ化します。
可視化例
- 知識:ITに関する基礎的な知識は70点と一定のリテラシーは有している。
- Excel:基本的な操作は理解しているが、マクロに関する技術は50点と改善の余地がある。
- プログラミング:各言語やデータ分析の知識・技術が共に50点で業務に生かすにはスキル不足。
③研修計画および研修の実施
スキルチェックによって各社員の課題を可視化したら、研修計画を立て、その計画に基づいて研修を実施します。また研修後もスキルチェックを行い、レベルアップの度合いも可視化します。
④自動化・効率化の達成
研修によって社員のスキルアップが明確になったら、そのスキルを実際の業務に活用して自動化・効率化を実践します。
こうして生まれた時間や資金を今度は新しい分野でのビジネスに投資することで、イノベーションを起こすなど、企業の持続的な成長が可能になります。
国の支援で人材育成を推進!
効果的な人材育成のコツは助成金活用
DX推進に向けて人材育成に力を入れたい!しかし、社員のリスキリングを行う期間の人手不足やスキル習得にかかる費用を賄う余裕がない・・・という会社は少なくないと思います。
そこでオススメするのが、資金繰りやコスト増の不安を解消する人材開発支援助成金の活用です。
助成金は実際にいくらもらえる?
人材育成コストを国が支援してくれるというけれど、実際のところ助成金はいくらもらえるのでしょうか。研修内容によって異なりますが、条件次第では大部分の費用を助成金でまかなうことが可能です。
※HPより引用
DX化が進めばエンゲージメントも向上
助成金の活用によりDX化が進めば、これまでにお伝えした競争力の維持・業務効率化・コスト削減・新しいビジネスモデルの創出といったメリットが得られるだけでなく、社員のモチベーションUPや愛社精神の醸成にもつながります。その意味でも、いま人への投資は欠かせない経営戦略の一つなのです。
まとめ
製造業におけるDXの推進には、デジタルスキルを持つ人材の育成が鍵となります。計画的な人材育成と国の助成金の活用により、企業は効率的なDX推進と生産性向上を実現できます。この機会を活かし、競争力の強化を図りましょう。