
株式会社SUBARU: 組込み系システム開発新卒研修
今回、株式会社SUBARU様において、新卒初学者を対象とした組込み系システム開発研修を実施しました。本取り組みは、SUBARU様と弊社、テクノプロ・デザイン社の三者協力体制によって実現したものです。ここでは研修導入の背景や狙いについて伺いました。

人材育成の背景
Q:当社で実施しております組込み系システム開発の新卒研修ですが、どのような経緯で研修を企画することになったのかをお聞かせください。
自動車業界は大変革期に入り、CASE(Connected, Autonomous, Shared & Services, Electric)やMaaS(Mobility as a Service)などに代表される新技術が続々と導入され、これらは制御技術やソフトウェアの進化無しには成し得ないものとなっています。
また今後、ますます複雑化・高度化する技術要素を基に商品開発力の強化を含め、モノづくり改革を実行していくためには社内人財の育成が急務である、と人財育成戦略として掲げられた事が企画の背景です。
前述の通り、自動車業界ではハードウェアとソフトウェアの融合が急速に進んでおり、開発エンジニアに求められるスキルセットも大きく変化しています。特に組込システム開発や車載ネットワーク通信などが拡大し、コアなソフトウェアエンジニアでなくともソフトウェアの開発プロセスや相応の組込系専門スキルの理解・習得が必要になってきています。
一方で、これらのスキルを未経験者が短期間で実務レベルにまで習得するのは容易ではなく、効果的な教育環境の整備が急務となっていました。従来はOJTでの育成が中心でしたが、担当する業務によって知識やスキルの習得にばらつきがあり、立ち上がりに時間がかかることが課題となっていました。

こうした背景を踏まえ、本研修では、コンピュータの基礎からC言語プログラミング、組込みシステム、CAN通信等、組込みエンジニアに必要なスキルを段階的に学べるカリキュラムを整備しました。基礎編ではITエンジニアとしての土台を築き、応用編では実践的なシステム開発の流れを理解することに重点を置いています。特にプロジェクト型の演習を取り入れ、チームでの擬似的な開発をする経験を通じて、知識教育にとどまらず、実務に直結するスキルの養成を目指しています。
また、各科目ごとにスキルチェックテストを実施し、受講者の成長を可視化する仕組みを導入しました。さらに、講師による定性的な評価も加えることで、技術力だけでなく、エンジニア適性・問題解決能力・チームワークといった素養面の評価も導入しています。

これにより、研修成果を具体的なレポートとして提示でき、受講者の強みや今後の成長課題を明確にすることが可能となりました。 全39日間の研修を通じて、未経験者が組込みエンジニアに必要な知識とスキルを着実に習得し、現場配属後すぐに活躍できる人材へと成長する環境を整備しました。本研修は、新卒者の制御系エンジニア育成を支援し、弊社の技術革新を担う人材の育成に貢献しています。
人材育成への取り組み
Q:御社の人材育成に関するこれまでの取り組みや、考え方、今後の展望などをお聞かせください。
これまで弊社では、『クルマ』(ハードウェアや構成システムを含む)』に関する教育と『ソフトウェア』に関する教育を分けて考えがちでした。また専門的な教育カリキュラムは部門毎でも保有していますが、新卒若手メンバーに対する技術的な教育は部門毎で内容・レベルに濃淡がある状況でした。
今後開発の最前線で実働を担う若手メンバーに対して教育格差を無くすためにも、早い段階で開発のプロセスを体系立てて学んでもらい、知識だけでなく実業務として開発に参加できる経験を積んで貰い、クルマ1台を「ソフトウェア・ハードウェアの集合体」であるシステムと捉えられる様な人材育成の一歩として本教育を活用させて頂いている状況です。

研修の詳細
研修科目 | 新卒初学者を対象とした制御系システム研修 |
---|---|
日数 | C言語・組み込みシステム開発基礎編:9日間 C言語・組み込みシステム開発応用編:30日間 |
規模(人数) | 100名 |
実施形態 | 集合型研修 |
対象者のレベル感 | 新卒初学者~新卒IT経験者 |
研修後の効果
Q:今回の研修で当初の目的は達成できましたでしょうか?
はい、当初の目的は達成できたと実感しています。スキルを備えたエンジニアを狙い通りに育成できただけでなく、グループワークを通じて業界の将来や自身のスキルを見つめ直し、新たなスキルを身に着けることのメリットに自ら気づく機会を提供できた結果、受講者が主体的にスキル習得の必要性を理解し、前向きに取り組む姿勢が生まれました。
また、研修途中でスキルチェックテストが実施され、その結果がレポートとして可視化されたことで、受講者の学習進捗やスキルの向上を客観的に把握できる仕組みが整っていました。特に、定量的なスキルチェックテストに加え、講師による定性的な評価が行われたことで、技術力だけでなく実践的な能力の成長も可視化されました。これにより、受講者一人ひとりの強みや今後の成長課題を明確に捉え、適切な業務アサインや育成方針の検討に役立てることができました。結果として、研修の目的に沿った確かな学びが提供され、現場での即戦力化に繋がる気付きを各受講者へ根付かせる事ができたと考えています。

企業概要
株式会社SUBARU
株式会社SUBARU(スバル)は、日本の自動車および航空宇宙機器の製造・販売を手掛ける企業です。
近年では、電動化技術の導入にも注力し、電気自動車「ソルテラ」、ストロングハイブリッドを搭載した「フォレスター」「クロストレック」を発表するなど、環境対応を強化しており、存在感と魅力ある企業を目指し、個性ある商品を生み出すことに注力しています。 また、技術者の継続的なスキル向上にも力を入れており、当社の研修サービスを通じてデジタルトランスフォーメーション(DX)推進やITスキルの強化に取り組まれています。
研修カリキュラム
C言語・組み込みシステム開発 基礎(9日間)
カリキュラム | 詳細 |
---|---|
コンピューター概論 | コンピュータの基礎からOSの構成と管理までを学びます。 プロセッサアーキテクチャ、データ処理、メモリ管理、RTOSや車載OSの変化などを含みます。 |
C言語プログラミング 基礎 | C言語の基礎から学び、画面出力、変数、演算、条件分岐、繰り返し処理、配列まで幅広くカバーします。初心者でも安心して学べる内容で、各章末に理解度を確認する課題を用意しておりスキル定着を促進いたします。 |
組込みシステム開発 基礎 (Arduino) | Arduino Unoを用いて、実際の組込みシステム開発を行います。LED点滅やボタン入力処理、LCD表示、シリアル通信、音の出力など、さまざまな実践的なプロジェクトを通して、組込みシステムに必要な基本的な操作やプログラム技術を学びます。 |
C言語・組み込みシステム開発 応用 (30日間)
カリキュラム | 詳細 |
---|---|
C言語プログラミング 応用 | プロジェクト開発における [ 評価 > 企画 > 設計 > 評価 ] の流れを検証しながら検討をおこない、プロジェクトを推進する知識を身に付けます。具体的にはC言語で書かれたシンプルな自動販売機プログラムの仕様書とプログラムを理解し、そのテストを行います。その後、テストで見つかったバグの修正(仕様書の修正、プログラムの修正)を行います。 |
組込みシステム開発 応用 | STM32L152C-DISCOを使用します。マイコンボードを使い分けることで、異なる機能と開発手法を体験し、異なるアーキテクチャを学ぶことで、幅広い応用力を養います。 |
CAN通信 | Arduinoを使用したCAN通信講座では、組込みシステムにおけるCAN通信の基礎から実践までを体系的に学びます。まず、CAN通信の基本概念やエラー処理について理解を深め、続いてCANモジュールの使用方法とプログラムの実行・作成を実践します。 |
開発演習 (エアコンシステムの制御演習) | ソフトウェアエンジニアリングの基礎やUMLの理解、仕様書の書き方を徹底的に学習します。課題ではあらかじめ用意している仕様書・プログラムをもとにテスト工程および追加機能実装をグループで役割を決めて実施し開発の基礎を学びます。 |
自由課題演習 | ゼロベースで開発をグループで実施します。要求定義から発表準備までを行い、最終日には課題の発表を行います。 |
各種お申込みやご相談、助成金に関するご質問などございましたら、
お気軽にお問い合わせください。
法人フリーダイヤル
0120-20-9829
0120-20-9829
受付時間 9:00〜18:00(平日のみ)