
2020年のコロナ禍をきっかけに、日本の DX(デジタルトランスフォーメーション)は一気に加速しました。それから5年が経過した今、AI・IoT・クラウド技術のさらなる進化により、日常のさまざまな場面でデジタル化が進んでいます。
そうした中、私たちの暮らしやビジネスは今後、具体的にどのように変わっていくのでしょうか。 皆さんの仕事や生活に使えるDX事例をご紹介します。
こんな方におすすめ!
✅ 自社のDX推進を検討中の方
✅ 最新のDXトレンドやアイデアを知りたい方
✅ 各種デジタルツールを活用して業務効率化を目指したい方
「DXって難しそう…」と思っている方も、 実際の事例を知れば、すぐに実践できるヒントが見つかるはず!ぜひ最後までお読みいただけると幸いです。
【暮らす】にまつわるDX

1.スマートスピーカーのくらし応援!
スマートスピーカーとは、インターネットに接続することで人の音声を認識できるAIが質問やお願いに応えてくれるワイヤレススピーカーです。音楽の再生や予定の通知、知りたい情報を調べるなど、日々の暮らしのさまざまな場面でサポートしてくれます。
とりわけAmazonのEcho(エコー)シリーズは、AmazonのパーソナルAIアシスタントAlexa(アレクサ)を搭載したスマートスピーカーとして人気があります。
昨日としては、たとえば音楽の再生なら「Hi 〇〇(←デバイスの名前)、リラックスできる音楽をかけて」と話しかけるだけで、 AIアシスタントがあなたの好みやその時の気分に合わせたBGMを自動的に選んでくれます。
他にも、
- 赤ちゃんの泣き声を検知
- 部屋の照明を自動調整
- カメラで部屋の状況を確認して、スマホに通知
- 帰宅すると、お気に入りの音楽を流し、エアコンの温度を最適化
- 朝目覚めたら、天気予報やその日のスケジュールを読み上げ、コーヒーメーカーを自動的に起動
など、スマートスピーカーなどのAIの活用は、先進国では当たり前になりつつあり、日常生活をより快適で効率的なものに変えていると言えます。
2.チャットボットによる効率化はさらに進んでいる!
チャットボットとは、チャット(chat)とロボット(robot)の2つの言葉が由来で、あたかも会話するように短いテキストや音声でコンピューターに指示し、その結果を受け取るツールです。
チャットボットはあらかじめ設定されたルールに基づいて応答するプログラムなので、お客様からのお問い合わせ対応などに適しています。
専用のフォームからメールで問い合わせると、返信まで時間がかかりますが、チャットボットはその場で返答してくれるのが特徴です。
よくサイトを開くと、パソコンやスマートフォン画面の右下にひょっこり出てくるものがありますが、見たことがある!という方は多いのではないでしょうか。 チャットボットは将来的にコールセンターの代わりになるため、企業側にとっては大幅なコスト削減が期待できます。
3.お天気アナウンサーをAIがサポートする時代
昨今は、台風などの災害時にお天気アナウンサーが気象情報を読み上げながら、お天気AIがサポートする姿が見られるようになりました。
また、株式会社ウェザーニューズのお天気アプリ「ウェザーニュース」では、生成AIを活用した気象情報のアシスタント機能「お天気エージェント」の提供が始まっています。このAIは精度が高く、気象情報をチャット形式でわかりやすく回答してくれます。
たとえば、「京都・左京区で雨が降ったのは何日前?」や「東京・新宿から車で2時間以内、週末に晴れる観光スポットは?」など、従来のお天気アプリや気象情報のサイトではなかなか得にくい情報がわかります。
今後は、過去・現在・未来の気象情報に精通したAIが、天気予報を通じた新しい体験を提供していくことが当たり前になるかもしれませんね。
4.進化するチャットツールで仕事も学習も効率化
チャットツールとは、インターネットを介してリアルタイムにメッセージのやり取りができるコミュニケーションツールです。メールと異なり、双方向のコミュニケーションが可能です。
特に近年はビジネスチャットツールの普及により、定型文なしでスムーズなやりとりができるだけでなく、AIが要点を整理し、タスク化やリマインドを自動化することで作業の手間も軽減されています。
また、セキュリティの強化により電子ファイルを直接、送受信できるため、パスワード付きのzipファイルを別送する必要もなくなりました。
さらに、教育分野でもチャットツールの活用が進み、小学生の塾やオンライン学習では、宿題の提出やフィードバックがチャットで完結。親・先生・生徒のそれぞれがリアルタイムで学習の進捗を共有するなど、新しい学習スタイルが定着しつつあります。
【運ぶ】にまつわるDX

5.宅配便の集荷・再配達の受付はAIが代行
一部の大手物流・運送会社では、すでに宅配便の集荷・再配達の受付をAIが完全自動化し、音声認識や自然言語処理技術を活用したシステムを導入しています。
従来はオペレーターが電話で聞き取った内容を手入力していましたが、現在ではAIが音声をリアルタイムで解析し、配送システムに自動的に反映します。
また、昨今は若者をはじめ電話での手続きに面倒さを感じる消費者が増えていることから、より手軽に対応できるデジタル化の需要が拡大しています。実際、スマートフォンのカメラに不在票のQRコードをかざすと、LINEや専用アプリが起動して、ワンタップで再配達の依頼が可能です。
さらに、チャットボットを活用すれば、希望の配達時間や受け取り方法を自動調整できますし、音声アシスタント(AlexaやGoogleアシスタント)と連携すれば、たとえば「明日の午前中に再配達して」と話すだけで手続きが完了します。
このように、 AIとデジタル技術の活用が進むほど、消費者のストレスが軽減され、物流業界の業務効率化も加速します。
6.時刻表や乗車券もデジタル化
一部の鉄道会社では、 駅のホームなどにある時刻表をQRコードに変更するようになってきました。これは、昨今のデジタル化による単なるコスト削減ではなく、デジタル化によって乗客はリアルタイムで運行状況(発着だけでなく遅れや運休など)を把握することが可能になります。
また、東武鉄道ではきっぷをQRコードにしたり、JR東日本ではクレジットカードのタッチ決済で改札を通れるようになったりと、利便性はどんどん向上しています。
もちろん、鉄道は特定の層が利用するものではない公共交通機関なので、スマホなどデジタルツールに不慣れな方への配慮は必要でしょう。しかしながら、こうした施策は企業と乗客の双方にメリットがあるので、DXの担当者なら実際に利用して仕組みを理解することが大切です。
【買う・支払う】のDX

7.進むチケットレス・キャッシュレス「スポーツ観戦やコンサートもDX」
コンサートやスポーツ観戦など、イベント業界でもDX化は加速しており、完全チケットレス化が定着しつつあります。実際、スマートフォンで発行されるデジタルチケットをスキャンして入場するのが自然になりました。
また、NFTチケットや生体認証を活用した新たな入場システムも登場しています。これらは単なるデジタル化ではなく、感染症や不当な転売の対策にもなるため、今後はよりスマートでシームレスなイベント体験が当たり前になるでしょう。
8.飲食業界でセルフオーダーが浸透
レストランやファストフード店でセルフオーダーの導入が全国的に普及し、店員を介さずタッチパネルやスマートフォンで注文するのが一般化しています。たとえば、ガストや日高屋、サイゼリアなど大手飲食チェーンでは、すでにセルフオーダーを標準化し、注文の効率化と店員の業務負担の軽減を実現しています。
また、セルフオーダーは、
- 店員の聞き間違いや商品の取り違えなど、ヒューマンエラーを削減
- オーダー時間の短縮および回転率向上
- 外国人観光客向けの多言語対応
といったメリットがあります。
その他、配膳ロボットの導入により、注文から提供、支払いまでの完全自動化を目指す動きが拡大しており、省人化とサービス向上の両立が不可能ではなくなりました。
9.スーパーでの買い物もセルフレジが主流に
レジに並ばず買い物ができるスマートフォンアプリやAI搭載のスマートカートを活用したセルフスキャンといったシステムが、大型スーパーマーケットを中心に全国的に普及しています。
このシステムは、ビジネスパーソンや子育て世代を中心に人気を集め、ショッピングの利便性が向上しています。
今後、高齢者や訪日観光客向けに多言語対応や音声ガイド機能を搭載したモデルが導入されるのは時間の問題で、より幅広い層にセルフ決済が浸透すると言えるでしょう。
2025年は、スマートショッピングのデジタル化が一層加速し、「レジに並ぶ」という概念が過去のものになるかもしれません。
【子育て・健康】のDX

10.プリントアプリでかわいい子どものベスト写真を保存できる
スマートフォンのカメラはその性能が年々向上しており、子どもの写真や動画が日々増え続ける時代です。気づけばスマホのストレージがいっぱいになり、どの写真を残すべきか迷うパパ・ママ、祖父母世代は多いのではないでしょうか。
そんな悩みを解決するのが、AIを活用した写真管理・プリントアプリ。AIが自動でベストショットを選び、子どもの成長記録を時系列で整理してくれます。また、クラウドストレージと連携すれば、家族みんなで共有できるアルバムの自動生成も可能です。
今後は、スマートスピーカーやIoTデバイスとも連携して、音声で写真を呼び出して家族みんなで楽しむ!なんてことが、新たな写真管理の形になるかもしれません。
大切な瞬間を逃さず、思い出をいつでも最高の形で振り返られるデジタル技術の活用は、生きがいの向上にもつながると言えます。
11.子どもの欠席連絡をWebやアプリで簡単に提出
保育園・幼稚園・小中学学校では、欠席届のデジタル化が進み、専用アプリやLINEを活用した連絡システムを導入。保護者はスマートフォンから数タップで欠席や遅刻の連絡が完了し、電話連絡の手間が不要になりました。
現代は共働き世帯が増えていることから、親の負担が少しでも減ることはタイムマネジメントの観点からも重要です。また、保育士や教職員の確認作業も簡単になります。
これは欠席届だけでなく、各種の行事の連絡や子どもの様子を伝える手段として非常に有効です。
円滑な情報共有を実現する保育・教育分野のDXは着々と進んでいます。
12.お薬手帳アプリやWeb問診など医療DXが進む
お薬手帳は薬の飲み合わせや健康情報を管理する重要なツールですが、アプリ化が進み、スマートフォンで簡単に薬の情報を確認できるようになりました。医療機関や薬局とデータを連携することで、処方履歴がリアルタイムで反映 され、飲み合わせのリスクも自動チェックされるなど、安全性も向上しています。
また、コロナ禍以降はWeb問診システムが全国のクリニックに普及し、受診前にスマホやPCで問診票を入力できるシステムも定着しつつあります。
このように、デジタルツールの活用は来院前に問診を済ませることで待ち時間を大幅に削減したり、ペーパーレス化と情報共有を効率化を実現したり、患者と医療機関、双方の負担を軽減することに成功しています。
【日本】を次世代に伝えるDX

13.お賽銭もキャッシュレス賽銭!神社仏閣のDX
コロナ禍を経てインバウンドが盛んな日本の神社仏閣。
神社やお寺でのお参りするとき、小銭を用意することなくスマートフォンでお賽銭を納められるキャッシュレス賽銭の開始は大きな話題を呼びました。有名どころでは、増上寺(東京都港区)や四天王寺(大阪府大阪市)などがキャッシュレス決済(Paypay)での導入を決めました。
また、寺社によってはNFTを活用したデジタル絵馬、ライブ配信による法事といった取り組みも始まっており、デジタル技術を活かした新しい信仰の形が広がっています。
もちろん、こうした取り組みは賛否両論あると思います。もともと初穂料や香料などお供えの形は時代とともに変化しており、信仰の本質である感謝の気持ちを届けることには変わりありません。 神社仏閣のDXは今後も進んでいくことでしょう。
14.伝統芸能の世界もテクノロジーが浸透
伝統芸能の世界では、次世代の担い手不足(演奏者)が深刻化しているため、デジタル技術を活用した和楽器のDXが進んでいます。
とりわけ音を出す練習だけで1年以上かかる和楽器もある中、
- AI×和楽器で演奏データを学習し、自動伴奏を生成
- センサー付き和楽器で初心者が正しい奏法を効率的に習得
- 演奏の一部を高品質なサウンドデータに置き換え、演奏者の負担を軽減
といったテクノロジーとの融合が始まっています。
一部の公園では、観客が見ていないときに人間が演奏せず、過去の演奏データをBGMに流しているそうです。演奏や演舞は芸能者の体力を著しく消耗するため、デジタル技術の力を借りることで、人前の晴れの舞台で最高の芸能を演じることができるよう工夫を凝らしています。
「ハレとケ」で言うなら、ケ(=日常、影の部分)の部分のDXと言えるでしょう。
おわりに

ここまで14のDX事例をご紹介しましたが、意外と身近なところで、DXはすでに浸透していることがわかったのではないでしょうか。
ご紹介したDX事例はどれも今まであった常識を疑い、「デジタルの力で、もっと軽やかにスピーディーに進められないか?人間がやる必要あるのか?」を追求したものとなっています。
決して大がかりなものでなく、身近なところからも始まっているDX。本記事が、今後の皆さんの生活や各企業のビジネスにおいてDX推進の一助になれば幸いです。