
これまでの流れとして、第1回でクライアントの課題を見つけ、第2回でパンフレットの方向性を決め、第3回からは具体的にカタチを考え、第4〜5回で必要な原稿を用意していく作業へと進んできました。
そして第6回から、ようやくデザインの制作へと入ります。
ここからは株式会社MARLのデザイナー前田が担当させていただきます。
デザインへの着手がパンフレット制作のスタートと思われがちですが、実際には前回までのお話の通り、しっかりと土台を固めた上で実制作に入ることで、より訴求力が高いパンフレット制作を行うことができます。
ではパンフレットデザインの流れをご紹介していきましょう。
グラフィックデザイナー紹介

株式会社MARLのデザイナー前田が解説させていただきます。
デザイン骨子の作成
まずパンフレットのデザインを作成するにあたり、デザイン骨子といわれる複数の案を作成していきます。
やみくもにデザインを作るのではなく、ポップで賑やかなテイストから、やや落ち着いたテイストまで、表現に幅のある案を作成し、クライアントへプレゼンテーションを行います。

ここでの狙いは、「どれかの案に決めてもらう」のではなく、「クライアントの率直な意見を引き出す」ためのデザインです。
クライアントにも複数の担当者がおり、デザイン着手の段階では、社内コンセンサス(意見の合致)が取れていないことが多いためです。それは決して悪いことではなく、担当者ごとに考えがあり、「こういうパンフレットであればより強い訴求力を持つことができる」「こういったイメージにしていきたい」というアイデアをそれぞれがお持ちだからです。デザイン骨子は、様々な意見を引き出すための「討論の素材」という役割を担います。
ご要望に対して、きちんと理解できるまでとことん質問したり、プロとして意見を述べたりと、コミュニケーションを密に行います。アートディレクター、デザイナーは、クライアントから出る複数の意見を咀嚼し、着地点を見いだせればプレゼンテーションは完了となります。
デザインの作成

プレゼンテーションで得たクライアントの要望から、より具体的なデザインを制作していきます。
あまりポップにしすぎない、読み手の心をつかめるようなビジュアルイメージをメインに持っていきたい、
親しみあるあしらいを各所に散りばめたい…、様々な要望をバランスよくカタチとして作り上げていきます。
さらに今回のパンフレットは、WEBコースやCADコース、ビジネスコースなど、各コースのパンフレット制作を行うため、イメージ統一が施されたデザインが必要となります。
他コースパンフへのデザイン展開が難しくなるような表現は極力避け、しかもコースの特色がきちんと表現できるデザインを求められる、とても難易度の高い案件となります。
写真の選定、デザイン、文章表現がわかりやすいものになっているのかなど、社内でデザイナーが意見を戦い合わせ、ブラッシュアップを繰り返していきます。
一通りデザインが仕上がると、クライアントへチェック出しを行い、さらに細かな要望に応え、完成へと一歩ずつ近づけていきます。
入稿データ制作の開始
ようやくデザインが完成すると、印刷に向けたデータ制作へと進んでいきます。
DTPにおける印刷用データのことを「入稿データ」と言い、入稿データの作成は適切な印刷知識が必要となる作業です。DTP以前から使われていた言葉ですが、「版下(はんした)制作」とも言い、とても慎重なデータ作成が求められます。
色を表現するインクにはDICやPANTONEなどの特色もありますが、基本的に印刷物はCMYK(シアン・マゼンダ・イエロー・ブラック)の4色で構成されています。そのためデータ作成の際には、RGB(レッド・グリーン・ブルー)ではなく、イラストレータデータや配置画像などをCMYKに変換していきます。
またトンボの設定やヘアライン、孤立点の有無、フォントのアウトライン化、配置画像が同一フォルダに収められているかどうか…、印刷事故を防ぐためのチェック事項は多岐に渡ります。
印刷データが一通り完成すると、「色校正」というステップに進んでいきます。
次回は、色校正から印刷納品までの流れをお話します。