こんにちは、今回の記事を担当するミソノです。
WinスクールでIT・RPA系の授業・セミナー講師を担当しています。
2021年3月2日、Microsoft社よりすべてのWindows10ユーザーにMicrosoft Power Automate Desktop(以下Power Automate Desktop)が無料提供されることが発表されました。話題となっているPower Automate Desktop、一体何がすごいのでしょうか?
目次
とても気軽に使えるRPAツール
Power Automate Desktop は、Windows10ユーザーであれば誰でも使えるRPAツールです。
これまでにリリースされているRPAツールの多くは毎月のライセンス料が必要で、無料ツールの場合は、同じツールの有償版と比較して機能が限定されています。
対して、 Power Automate DesktopはWindows10ユーザーであれば、最初から全ての機能が無料で使えます。
大まかにどのような機能が使用できるのかリストアップすると、
- ファイルやフォルダの操作(作成、移動、コピー、圧縮など)
- Officeアプリケーション(Excel・Outlook)の操作・連携
- PDFファイルからテキスト画像の抽出
- スクリーンショットの保存
- 画像内の文字を抽出(OCR機能)
- 変数や条件分岐、ループ処理などのプログラミング機能
- Microsoft, IBM ,Googleのコグニティブサービス※との連携
- Microsoft AzureまたはAmazon Web Serviceのようなクラウドとの連携
※コグニティブサービス…コンピュータ技術を組み合わせることにより、データに対しての判断を人ではなく、コンピュータが行うもの。例えば画像分析・表情分析・音声分析など。
などなど、非常に多岐にわたります。
これだけの機能をすべて無料で使用することができるのです。
実際にPower Automate Desktopを使ってみた
論より証拠です。
実際に Power Automate Desktopを使用している画面を見ていただくことにしましょう。
まず、インストールを行いPower Automate Desktopを起動すると下記の画面が表示されます。
画面左上の[新しいフロー]をクリックすると、
「フロー名」が表示されますので、これから行う操作の名前を入力します。
[作成]ボタンをクリックすると少し時間が経って、もう1つのウィンドウが表示されます。
使い方は非常に直観的です。
左メニューからWindowsに操作を行ってほしい内容を選び、上記の「アクションがまだ追加されていません」と記載されているところにドラッグ&ドロップを行うだけの非常にシンプルな操作となっています。
今回は、普段のRPAセミナーでもご要望の多い、「Excelデータからデータを抽出し、Outlookを立ち上げてメール送信を行う処理」を登録してみたいと思います!
RPAツールのプログラミングは
人間が行う操作と一緒
「RPAに初めて触れる」という方のために、ここで少しRPAツールとプログラミングについてご説明します。
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RPAを扱うのに「プログラミング」の知識は一切不要、という説明を見かけます。
IT専門で仕事をしていくレベルまでは必要ありませんが、「プログラミング的思考」ができなければRPAを使いこなし、メリットを感じることはできません。
ここでのプログラミング的思考とは、
目的を達成するための手順・方法を形式的に表現する考え方のことで、アルゴリズムと呼ばれます。
プログラミングやアルゴリズムという言葉を聞くと「難しそう」「高度な内容」だと不安になられる方も多いようです。
ですがこのように考えていただくとよいでしょう。
人間に対してはその人が話せる言語で指示や会話を行います。
対してコンピュータは、コンピュータが理解できる言語で指示を行います。
相手が人間であればカタコトでも相手がくみ取ってくれますが、コンピュータはそうもいきません。
ルールに則り、とことん相手に合わせた命令文を作ります。
これらがプログラミング言語と呼ばれるもので、それだけのことです。
とは言え、学習には時間がかかりますし、通常業務もこなしながら社内業務で役立つシステムを作る、というのはとても大変です。
そこで、最近ではキーボードでプログラミングを打ち込む、という方法ではなく、パズルのピースを組み合わせるように、マウスでコンピュータに行ってほしい内容をドラッグ&ドロップを行ってプログラミングを行う
「ローコード」「ノーコード」「ビジュアルプログラミング」と呼ばれる開発方法が多く導入されています。
プログラミングの基本ルールさえ覚えておけば、直感的な操作で自動化が可能なのです。
DX化が進む昨今では、これまで非IT職だった社員も扱えるツールとしてRPAツールの導入は増え、その人気は年々高まっています。
(WinスクールでのRPAセミナーの受注もありがたいことに、年々増えております)
今回扱う Power Automate Desktopもその方法で行います。
DXってよく聞くけど結局のところどういうこと?という方はこちらの記事も読んでみてください。
DX すべて教えます!その1 ビジネスパーソンならそろそろ知っておきたい DX 早わかり入門編!
DXってなんて読みますか? 今注目を集めている「DX」は何の略がご存じですか? ほとんどの方が”デラックス”と読んだと思います。実は「DX」=” Digital Transformation”(デジタルトランスフォーメーション)と…
ではイメージを掴んでいただけたところで、実際にプログラミングを行いましょう。
RPAツールを扱う場合は「自動化したい作業の流れをイメージすること」が重要です。
今回自動化したい作業の流れは、
1.Excelを起動する
2.メール文章が記載されているExcelファイルを開く。
3.Excelに記載されているメールのデータをチェックする。
4.Excelを閉じる。
5.Outlookを起動する。
6.メールの新規作成を行い、宛先、件名、CC、BCC、本文にExcelに記載されたメールをコピーする。
7.メールを送信する。
8.Outlookを閉じる。
この8つの工程となっています。
では1つ目の「Excelを起動する」を Power Automate Desktopに登録してみましょう。
左メニューより「Excel」→「詳細」をクリックすると「Excelの起動」という項目が現れます。
こちらを「アクションがまだ追加されていません」と記載されている場所へドラッグ&ドロップを行います。
すると、下記ウィンドウが表示されます。
今回は詳細な説明を割愛しますが、メール文章が記載されているExcelファイルを開く指示を行っています。
次に、メールに必要なデータが記載されているExcelのセルの場所を指定します。
今回宛先から本文までがC4からC8のセルまで記載されているのでそれぞれ指定を行います。
これらExcelの操作のプログラミングを行った結果が下記画像です。
次にOutlookの操作についてもExcelと同様にプログラミングを行います。
アクションの「Outlookを起動します」と「Outlookからのメール メッセージの送信」を登録します。
メール送信の宛先から本文まで先ほどExcelから取得を行ったデータを当てはめます(黒で塗りつぶしている部分はご自身のMicrosoftアカウントのメールアドレスを入力します)。
これらのプログラミングの最終結果は下記の画像のとおりです。。
実行ボタンをクリックするとプログラムが実行され、Excelから取得したデータがメールで送信されます。
同じく、CC,BCCも送信されたことがわかります。
(今回は存在しないメールアドレスなので、メール送信エラーとなっています)
このような流れでPower Automate Desktopの操作を行います。
どうでしょう。ほとんどマウス操作と簡単な入力しかしませんでした。
先述したとおり、目的を達成するための手順・方法を形式的に表現すること(アルゴリズム)ができれば、専門的なプログラミングの知識は不要なのです。
今回は1件のみで試しましたが、もっと沢山の人にメールを出さなければいけない場合、こんな風に登録して実行し、あとは放っておけば自動的にメールが送信されるわけですね。
これが無料で気軽に導入できるのは本当にすごいことだと思います。
今後のRPAツールの動き予想
2012年Blue Prism社のCMOであるPat Gearyが「RPA」という言葉を発表し、10年以上が経過しました。
RPAは最初の「黎明期」を終え、RPAの爆発的なブームが起きたのち、そして期待した成果を生み出せないなど、RPAに対する期待とのギャップを感じる「幻滅期」の期間を経て、現在は「啓蒙活動期」だと言われています。
各RPAツール開発会社が実際にRPAツールを使用された企業からのフィードバックを元に改良を行い、また、自動化を行う業務量はどの程度が適切かなどといったセミナーを開催するなど、第2次のRPAブームとなっています。
企業のDX推進や、ウィズコロナによるテレワーク化著しい現在、自宅から会社内のアプリケーションを動作させる場合においてもRPAツールは非常に強力なものです。そのため現在RPA市場は拡大傾向となっています。
様々なRPAツールが登場しては淘汰される、RPAツールの戦国時代が始まっているのです。
無償だからといっていいわけではなく、有償でサポートや研修を提供し、RPAを使いこなせるようにサポートしてくれる製品もあります。
社内にIT技術に強い社員がいるなら、また別の製品でもいいかもしれません。「そもそも一体何を自動化すべきなのか」を導入側はしっかり検討し、各RPA製品の特長を徹底的に調べ、比較し、ベストなものを導入する必要があります。
そんな中リリースされたMicrosoft Power Automate Desktop、今後RPAツールの市場・トレンドを塗り替える存在になることは間違いありません。
皆さんもぜひ試してみてくださいね。