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リスキリングを導入したい企業の人事が知るべき効率的な進め方

リスキリングを導入したい企業の人事が知るべき効率的な進め方

スキル不足を補い新たな成長分野で活躍する人材を育成できるリスキリングは、世界の潮流と言えるDX(デジタルトランスフォーメンション)化が急速に進む中、政府が補助金や助成金などで企業への支援体制を強めています。

しかし、企業側はリスキリングの導入メリットや進め方について、半信半疑というケースが少なくありません。

この記事では、リスキリングによって期待できる成果リスキリングの具体的な進め方について、すでに導入している企業の事例を交えて解説します。

政府も推進するリスキリングとは?

リスキリングとは、経済産業省では

新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること

引用元:https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_jinzai/pdf/002_02_02.pdf

と定義していますが、そもそもなぜ今、リスキリングが必要なのでしょうか。

リスキリングが注目されている理由

リスキリングが注目されている理由は、デジタル化に伴い職を失うかもしれない従業員を未然に防ぎ、彼(彼女)らが新しい成長産業で活躍できるようにするためです。これはジョブローテーションがスムーズになる(人的資本の流動性が高まる)ので、市場経済には好循環が生まれると言えます。

元々は世界中のリーダーが集まるダボス会議で「第4次産業革命によって1億3300万人分の新しい仕事が生まれ、同時に7500万人の雇用がこれらの新技術によって奪われる可能性がある」という警鐘が発端となり、「2030年までに全世界で10億人をリスキリングする」という宣言から広がりました。

つまり、テクノロジーによって置き換わる仕事がこの先ますます増えるため、企業は従業員に新たなスキルを身につけてもらうリスキリングの機会を提供することが必要不可欠なのです。

リスキリングってそもそも何?
DX時代の人材育成におすすめ!3つの主要スキル

そもそもリスキリングとは何か?を知りたい方は、こちらの記事でくわしく解説しています。

Moreスキルで企業と従業員がWin-Winに!

リスキリングの必要性はわかるけれど、実際に企業が導入を試みたとき、従業員がその方針に足並みをそろえてくれるか?という課題もあります。そこで重要なのがMoreスキルという考え方です。

Moreスキルという考え方

たとえば、企業が従業員に「Excelのスキルがあるなら、Excelマクロ/VBAを学び直してください」と奨励するとします。しかし、従業員は仕方なく従うまたは「なぜ?今のままじゃダメなの?」と疑問を持つ可能性が少なくないでしょう。

そのため、企業は「〇〇しなければならない」という業務命令的なものではなく、「〇〇を身につけることで、これまで以上に仕事の幅を広げていきましょう」のように、従業員のキャリアアップやモチベーション維持・向上を促すことが大切です。

従業員は新たなスキルを学ぶことで変化に適応できる人材となるため、リストラや失業リスクを回避するだけでなく、昇給や昇進のチャンスを得られます。一方で、企業側も不採算事業から成長事業への人材移動が採用コストをかけずにできるので、経営体質や成長力の強化につながります。

このように、リスキリングを厳しい経営環境にある現状からの脱却やさらなる高みを目指すMoreスキルと考えることで、企業と従業員はwin-winの関係になれるのです。

事例から学ぶリスキリングを効率的に導入する方法

リスキリングの導入にあたっては、企業も従業員もそれなりのコストが発生するため、お互いの需給バランスがどこで噛み合うかのを見極めることが大切です。そこで、リスキリングを効率的に導入する方法を、事例を交えてご紹介します。

リスキリングを効率的に行う施策

リスキリングを効率的に行う施策は意外とたくさんありますので、各企業の特性や経営環境に合わせて実施することが理想です。

社内インターシップ制度

社内インターンシップ制度とは、所属している部署以外の業務を希望する従業員が、一定期間その部署で働くことのできる制度です。これは対象の従業員が他の部署で学んだスキルを検証することで、適材適所を知るメリットがあります。

インセンティブ制度

インセンティブ制度とは、リスキリングや配属転換を希望する従業員に対して、一時的な報酬を与えることです。従業員のモチベーションと報酬は必ずしも一致しませんが、積極的に協力する従業員を優遇することはモチベーションの維持・向上につながります。

定期的な勉強会の開催

新しいスキルを学ぶことに意欲を示す従業員に対し、部署単位で定期的に勉強会を開くことは、リスキリングへの理解が深まります。

国や自治体が推奨する公的制度

たとえば厚生労働省は人材開発支援助成金制度を設けて、リスキリングを積極的に支援しています。こうした制度を利用すれば、企業はリスキリングのコスト負担を軽減できます。

外部セミナーの受講や社外講師による研修の実施

PC操作や各種ソフトウェアの使い方、デザイン、プログラミングなどのスキルを身につけるためには、一定期間、体系的に学ぶことが必要です。しかし、社内での教育は指導する側のスキル面や時間的な余裕に限界があります。

そのため、外部のセミナーや社外講師による研修の実施が望ましいでしょう。もちろん、そうした取り組みには予算を確保しなければなりませんが、各従業員の効率的なスキル習得が可能です。

ジョブ型雇用への転換

ジョブ型雇用とは業務範囲を明確にし、業務の成果にフォーカスする雇用システムです。テレワークの普及により新たな働き方が広がっている現代は、ジョブ型雇用の方が従業員は時間的にも精神的にも余裕があるので、リスキリングにチャレンジしやすい環境と言えます。

企業のリスキリング導入事例

日産自動車

EVや自動運転など大きな転換期を迎えている自動車産業。日産自動車では、これからのクルマづくりに欠かせないソフトウェアの知識を4カ月間にわたって集中的に学ぶ「ブートキャンプ」というリスキリングプログラムを実施しました。とりわけエンジニアリング部門では、機械工学系のエンジニアが電気系やIT系に転向しつつあるとのことで、従業員もリスキリングの重要性を感じていると言えます。

参考:日産、リスキリングで4カ月「ブートキャンプ」(日経産業新聞)

ヤマト運輸

ヤマト運輸では、2021年4月社内教育制度「ヤマトデジタルアカデミー」を発足させ、社内から毎回30人ほどを選抜して2カ月間のデータ教育を行っています。

この教育制度を利用して、宅急便センターで営業や人事などの業務を行っていた入社7年目の社員をデータマネジメントチームへと配置転換しました。

参考:ヤマト、本気のリスキリング デジタル人材1000人目標(日経産業新聞)

西川コミュニケーションズ

名古屋市に拠点を置く西川コミュニケーションズは1906年に創業した印刷の伝統企業です。かつては電話帳の印刷を請け負い、紙に関わる仕事が売上高の9割以上を占めていましたが、2018年に社長が突然に「これからはAI(人工知能)をやる」と宣言。

ほとんどの従業員は文系出身者にもかかわらず、ディープラーニング(深層学習)に取り組むため、社外から講師を招いたり、eラーニングを導入したりして学びを促しています。

業務時間の2割をリスキリングに充て、日本ディープラーニング協会が運営するAIに関する検定(G検定)に約80人もの合格者を輩出しているとのことです。

参考:「電話帳の会社」リスキリングで変身 中小トップの覚悟(日経産業新聞)

リスキリングを成功させる進め方3ステップ

リスキリングに取り組む企業はどのように進めていけば、先ほどご紹介した企業事例のように成果を出せるのでしょうか。ここではリスキリングを成功させるための進め方を3ステップでお伝えします。

ステップ1:理想の人物像を明確化

最初にやるべきことはリスキリングに取り組む従業員一人ひとりに、理想とする人物像を明確化してもらうことです。たとえば、IoTエンジニアとして採用されて間もない従業員なら、「実務で求められるデータ分析やシステム開発を自ら手がけて、プロジェクトを運営・管理できるエンジニア」のように、職務上のゴールを明らかにします。

ステップ2:現状のスキル把握

理想の状態がハッキリしたら、次に行うのは現状のスキル把握です。従業員のスキルが現状、どのくらい理想と乖離しているのかを数値化することで、具体的に何を学べば良いかが明確になります。

スキル把握の方法はスキルアンケートやスキルチェックテストを実施し、採用時の判断基準や育成プランの立案に活用します。とりわけスキルチェックテストによる現状把握は、その結果に応じて必要な研修を実施し、研修後に再度スキルチェックテストで検証を行う流れです。

そうすることで、たとえば「Javaにはくわしいけれど、データベースはよく知らない」というエンジニアに対して、より具体的な育成プランを立案できるようになります。また育成プランの立案にあたっては、必要な研修内容をマッピング(講座マップを作成)することで、従業員一人ひとりのスキルを見える化できます。

ステップ3:対象者へのマインドセット

従業員に対するリスキリングを計画通り進めるには、対象者へのマインドセットが大切です。理想の人物像と現状のギャップを埋めるにあたり、従業員が不安や疑問を抱かないように、前述したMoreスキルの考え方でモチベーションを維持・向上させましょう。

おわりに〜企業内への周知は伝え方が重要

企業内にリスキリングを周知するとき、ポイントとなるのは従業員への伝え方です。

まずはビジネスニーズとリスキリングの関連性を明確にしましょう。企業が抱えるビジネスの課題や新しい技術の導入によって、スキル要件が変化していることをきちんと説明することが重要です。

その上で、従業員のキャリアアップを支援するというメッセージを強調することで、従業員のリスキリングに対する理解や賛同が得られやすくなります。

さらに、リスキリングという投資へのリターン(獲得できるスキルや昇給など)を明示することにより、従業員の意識を高めることが可能です。

企業は従業員をどう動かすかで経営環境が良くも悪くもなりますので、人事担当の方はリスキリングの重要性をきちんと理解し、成功する運用方法を考えましょう。

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