AIをはじめとしたデジタル技術の活用が先進各国で広まる中、日本の企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化はますます重要な課題となっています。そのため、人事担当者の多くは経営陣からDX推進による成果を期待されています。
ただ一言にDXといっても、「何から始めれば良いかわからない」というのが人事担当者の本音ではないでしょうか。
この記事では、DX推進担当の役割を明確にした上で、企業のDX化に必要なコツをプレイングマネージャーの存在にフォーカスして解説します。
DXの重要性を再認識する
社内でDXを推進するためには、担当者自身のDXに対する理解は絶対条件と言えます。そのため、まずはDXの重要性を再認識することがDX推進のファーストステップです。
DXが中小企業に与える影響
そもそもDXとは、企業がデジタル技術を活用して業務効率化やビジネスモデルの変革により、持続的な成長を目指す取り組みのことです。そして今、テクノロジーの進歩やデジタル化の普及は、さまざまな産業や組織に影響を与えています。
実際にDXが中小企業に与える影響はどのような部分でしょうか。具体的にいうと、DXによって次のような効果が期待できます。
- 業務効率化による生産性の向上
- 新たなビジネスモデルの創造
- カスタマーサービスの強化
- 市場での競争力強化と新規参入の促進
- 従業員のモチベーション向上
このように、アナログ作業が多くデジタル化が遅れている中小企業がDXに取り組むことは、マクロ環境(市場)だけでなくミクロな部分(企業内)においてもポジティブな影響をもたらします。つまり、DXは中小企業にとって、今後の重要なビジネス戦略と言えます。
DXを一から知りたい!という方は、2020年に経済産業省が公表したレポートの熟読をおすすめします。→ https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201228004/20201228004-3.pdf
DX化は競争力や業績の向上につながる
企業が各ビジネス場面においてDX化を進めることは競争力や業績の向上につながります。前項でも触れたように、DXによって業務効率化や新たなビジネスモデルを生み出すことが可能です。
とりわけデータ収集・分析の自動化は迅速な意思決定ができるため、市場の変化を素早く察知し、競合他社よりも一歩先の行動を可能にします。仮に競合他社がDX化に取り組んでいたとしても、それは相互に競争力が高まるため、結果的に市場は拡大します。
そうすると、自然とコスト削減や収益拡大のチャンスが広がることは言うまでもありません。
DXの導入で何が変わる?
実際にDXを導入すると、社内では具体的に何が変わるのでしょうか。
たとえば、手作業や複雑な業務プロセスをRPA(ロボティックプロセスオートメーション)により自動化すると、作業時間の短縮・人的ミスの削減・人件費の削減が可能となり、生産性が向上します。
また従業員が研修などを通して、デジタルツールや新しい技術を学ぶことで、社内全体としてDXに対するマインドセットが醸成されます。つまり、DXは組織文化の変革を促進する役割も果たしています。
またこうした取り組みを重ねることがイノベーションを起こすキッカケになるので、DXの推進は急務と言えます。
DX推進担当の役割
会社でDX推進担当に任命されたら、具体的に何をすれば良いのでしょうか。DX推進担当の役割を解説します。
DX推進担当とは?
DX推進担当とは文字通り、DX化実現のための働きかけを行う人です。ただその取り組みは多岐にわたります。たとえば、DX戦略の策定から始まり、デジタル技術の評価と導入・社内の意識改革・プロジェクトマネジメント・DX化に関わる外部パートナーとの連携など、やるべきことが満載です。
与えられるミッション
DX推進担当がやるべき業務はそれぞれDXを成功させるためのミッションと言えます。
戦略策定:企業のビジョンや目標と紐付けたDX戦略を策定し、市場動向の分析・デジタル技術の活用方法や優先順位を決定します。
デジタル技術の導入:最新のテクノロジーを研究し、実際に社内の業務に適用するためのデジタルツールの評価を行い、スムーズな導入を実現します。
意識変革:DXに伴う組織文化の変革や業務プロセスの再設計、新しい働き方の導入など、柔軟性のある風土・文化の確立に励みます。
リーダーシップ:DXの重要性を社内全体で共有できるように、リーダーシップの発揮が求められます。そのため、自らのコミュニケーション力を向上させ、目標達成に向けたコーチングを積極的に行うことが大切です。
プロジェクト推進:プロジェクトマネジメントにより、進捗状況のモニタリングや問題解決への取り組み、外部パートナーや業界団体との連携を図り、プロジェクトを成功に導きます。
このように、DX推進担当は与えられたミッションを着実に遂行していくことが重要です。
自らデジタル人材になる
社内にDXを浸透させようといっても、担当者自身がDXに疎かったら従業員の協力は得にくいでしょう。そのため、DX推進担当が最初にやるべきことは、自らがデジタル人材になることです。
デジタル人材になるためには、実際に各種デジタルツールや最新のテクノロジーに触れることが大切です。プログラミング言語・データサイエンス・AI(人工知能)・クラウドコンピューティング・セキュリティなど、どのようなツールが存在して、それぞれ何ができるのかを知るだけでも前進していると言えます。
人事の業務においても、たとえば手作業で時間のかかる勤怠管理データの管理をRPAツールで自動化してみるなど、身近でチャレンジしやすいものから試してみましょう。
プレイングマネージャーとタイアップする重要性
DX推進担当が自らデジタル人材として業務を遂行できるようになったら、次にやるべきことはプレイングマネージャーとのタイアップです。
プレイングマネージャーとは?
プレイングマネージャーとは、社内で主に管理職でありながら、現場の作業やプロジェクトの進行にも直接参加する人を指します。彼(彼女)らは管理職として部門の指導や統括をしながら、自らも積極的に業務に関わり、実務を担当します。
社内におけるプレイングマネージャーの影響度
プレイングマネージャーは社内で影響力を持つ存在と言えます。なぜなら、彼(彼女)らは現場の実務に深く関わっており、チームのメンバーとも密接な関係を築いているからです。
つまり、プレイングマネージャーの意思決定や行動は現場の従業員に大きな影響を与える可能性があり、DXの推進においてプレイングマネージャーの協力は必要不可欠と言えます。
現場の従業員との協調プロセス
プレイングマネージャーの協力を得るには、DX推進担当が彼(彼女)らと積極的にコミュニケーションを図り、共通の目標やビジョンを共有することが大切です。とりわけDXの重要性やメリットについては情報共有を密にし、それを現場の従業員に向けて発信していきます。
その上で、プレイングマネージャーを介して現場のニーズを把握し、そのニーズに応じて従業員のマインドセットやスキルアップのための教育体制を整備します。もし、従業員がDXに対して不安や不満を抱いている場合は、より丁寧なコミュニケーションが必要です。
またDX化は、何か一つ対策を講じたら終わりというものではありません。継続的な取り組みを実施していくためにも、プレイングマネージャーには現場のフィードバックを収集してもらいます。
DX推進担当は、そのフィードバックを元にDX戦略のPDCAを回し、現場との協調性を深めていくことが重要です。
プレイングマネージャーの育成はDX化の最短ルート?
DX推進のために現場を知るプレイングマネージャーとのタイアップが重要であることはわかったけれど、深刻な人手不足や予算の少ない中小企業ではなかなか思い通りにいかないのが現実です。そこでキーポイントとなるのがプレイングマネージャーの育成です。
プレイングマネージャーの現状
前項でもお伝えしたように、プレイングマネージャーは現場の労務管理だけでなく、自らも積極的に実務をこなす存在です。しかし、その多忙な状況から自身のマネジメントスキルを向上する時間がなく、新人教育をはじめとする人材育成に注力できていない方は少なくありません。
またプレイングマネージャーが日々の業務に忙殺されて、従業員とのコミュニケーションがとれていない場合もあります。こうした状況では、DX推進担当がトップダウンでDXに関する社員教育を実施しても、現場が混乱するだけです。
では一体、どうすればDXを現場レベルで落とし込むことができるのでしょうか。それはプレイングマネージャーの成長を促すことです。
プレイングマネージャーの育成
DX推進担当がプレイングマネージャーとタイアップするにあたって、プレイングマネージャーがDXの知識不足やマネジメントに余裕がない場合、彼(彼女)らの育成が優先となります。
たとえば、マネジメントの型やコツが学べる研修や業務効率化のツールを覚える研修などによる支援です。これにより、プレイングマネージャーはプレイヤーとしての業務とマネージャーとしての業務を別々ではなく、どうすれば双方の業務を効率的にこなせるのか?一体として捉えることができるようになります。
これはDX推進担当が人事だからこそできる支援方法です。
プレイングマネージャーの育成=DX推進
プレイングマネージャーはチームのリーダーとして、従業員を指導し、サポートする役割を果たします。そのため、プレイングマネージャーに対するDX教育を施すことで、そのスキルを得た彼(彼女)らは現場の従業員に対して、適切なトレーニングを行うことが可能になります。
プレイングマネージャーの育成ができれば、従業員のDXへの理解が深まります。その結果、たとえば部署ごとに改善効果が大きいと思われる作業を抽出して、必要なデジタルツールやテクノロジーをスムーズに導入することが可能です。
このように、プレイングマネージャーの育成はDX推進につながる重要な対策と言えます。
自己啓発と学習機会の拡大
DX推進担当である自身の成長はもちろん、プレイングマネージャーや現場の従業員の教育は具体的にどのような方法があるのでしょうか。ここでは自己啓発や学習機会の効率的な広げ方をご紹介します。
担当者自身の成長
繰り返しになりますが、社内でDXを推進するためには、担当者自身の成長が欠かせません。たとえば資格取得の勉強をして、マネジメント能力を向上させることも選択肢の一つです。IT系のキャリアアップで言えば、DX推進に取り組む中でPMP®試験を目指した学習をすることはDX推進というプロジェクトの進行自体に役立つと同時に、プロジェクトマネージャーと共通言語での会話が可能になることや新たなマネージャー候補の育成にも役立ちます。
OFF-JTの積極的な活用
プレイングマネージャーをはじめ現場の従業員に対して、DXにつながる研修などリスキリングの機会を与えることは重要な施策です。ただ社内に十分なデジタル人材がいない状況で研修を内製化することは、各自の業務ボリュームや作業負担が増えるだけで、かえって生産性を下げてしまう恐れがあります。
そのため、プレイングマネージャーや従業員にリスキリングを促すなら、OFF-JT(外部機関の研修)を積極的に行うことが研修のクオリティや予算の面からも効果的と言えます。
とりわけWinスクールでは企業の状況に合わせた研修の計画から実施までをサポートできます。たとえば、従業員一人ひとりに対するスキルマップを作成し、必要な研修を一目で把握できるので、スキル習得までのロードマップを描きやすい特徴があります。そして各研修の受講することで、新しいスキルと自信を身につけることが可能です。
まとめ
DX推進担当は自らDXについて積極的に学び、プレイングマネージャーと連携を図りながら、社内におけるDXの情報共有や人材育成をしていく重要な役割があります。企業によっては人手不足や予算の都合で従業員に対する教育が行き届かないケースがありますが、外部のリソースを効率よく利用することでリスキリング・DX化を進めることが可能です。
身近にできることから始めるだけでもDX化に向かって前進します。企業の持続的な成長はもちろん、自身のキャリアアップのためにも最初の一歩を踏み出しましょう。