
システムや商品・サービスを開発するときに組まれるプロジェクトの成功は、IT技術者の補強だけでなくメンバーを束ねてプロジェクトを進行・管理するマネージャーの存在が欠かせません。これまで、プロジェクトの成功率はマネージャーの経験やノウハウに頼ることが大きい状況でした。
そこで注目されているのがプロジェクトを成功に導くPMP®資格です。この記事では、企業の中堅社員のキャリアアップとして役立つPMP®資格の取得やプロジェクトマネージャーに求められる能力を解説します。
目次
DX時代に求められるプロジェクトマネジメント「PMP®資格」とは?

近年、世界的に求められているプロジェクトマネジメントのスキルですが、その国際認定資格であるPMP®資格とは一体どのような資格なのでしょうか。
PMP®は国際的な認定資格
PMP®とはProject Management Professional(プロジェクトマネジメントプロフェッショナル)の略称で、プロジェクトマネジメント分野での国際的な認定資格の一つです。PMP®は、アメリカに本部を置く非営利団体であるプロジェクトマネジメント協会(PMI)が主催する試験に合格することで取得できます。
PMP®資格は、プロジェクトマネージャーとしてのスキルや知識を認定するものであり、プロジェクトをリードし、管理する経験、教育、能力が備わっていることを証明します。
また認定を受けるための試験は、人材(リーダーシップ)、プロセス(仕事のやり方)、ビジネス環境(戦略目標の実現)という3つの領域から180問が出題されます。
プロジェクトマネジメントとは?
プロジェクトマネジメントとは目標が掲げられているプロジェクトにおいて、プロジェクトの立ち上げ、計画、実行、監視、終了といった一連の流れ(プロセス)を効果的に管理します。また、不確実性の高いプロジェクトにおいては効果的に対処しながらプロジェクトを遂行します。
プロジェクトマネジメントは目的を明確にし、ステークホルダー(利害関係者)のニーズや要件を満たすために、リソースや予算を効果的に活用します。具体的には、品質・スケジュール・コスト・リスク・人員などを計画、実行、管理します。
プロジェクトマネジメントには、さまざまなツールや技法がありますが、最も重要なのはコミュニケーションです。プロジェクトマネージャーは、プロジェクトに関わるさまざまなステークホルダーとの意思疎通を円滑にし、目標達成に向けて全体的な調和・調整が求められます。
また、プロジェクト自体を組織の戦略として位置づけ、持続的な価値の創出を目指す企業も増えています。
PMP®資格の必要性
2023年4月現在、PMP®資格がないと仕事に携われないという公的な許認可はありませんが、公共系の入札案件にPMP®資格取得が条件になっているケースがあるなど、資格を持つことでプロジェクトマネージャーとしての信頼性や専門性を高めることができます。また、資格を持つことにより高い報酬やキャリアアップの機会を得ることも可能です。そのため、昇進や転職を考えている方にとって有利な資格と言えるでしょう。
DX時代は新しい分野での成長が求められるため、企業の戦略を成功に導くプロジェクトマネジメントのスキルは今後、その重要度がさらに高まることが予想されます。そのためにもPMP®資格を取得する意義は十分にあると言えます。
プロジェクトマネージャーに求められるスキル

プロジェクトマネージャーの仕事に就く場合、主に6つのスキルが求められます。
1.リーダーシップ
プロジェクトマネージャーという名の通り、プロジェクトを率いてメンバーを指導するリーダーシップは必要不可欠です。プロジェクトの目標やそれぞれの役割を明確にし、メンバーのモチベーションを高めることが真のリーダーシップと言えます。
2.コミュニケーション力
プロジェクトマネジメントはメンバー内だけの意思疎通を図れば良いというものではありません。実際、企業の成長戦略であれば多くの利害関係者(ステークホルダー)が関わります。そのため、明確な説明や傾聴、交渉力など、優れたコミュニケーション力が必要です。
3.スケジュール管理能力
プロジェクトの進捗管理は非常に重要です。市場は競争社会ですから、プロジェクトを計画通りに進めることがプロジェクトマネージャーに求められる資質と言えます。
4.関連技術に対する見識
プロジェクトマネージャーは単なるファシリテーターではありません。ソフトウェア開発・建設・製造・医療など、プロジェクトの性質によっては、技術的な知識がないと進行・管理に支障が出る場合もあります。そのため、専門的な見識が求められます。
5.問題解決能力
プロジェクトはその規模や関わるメンバーの数によって、ミスやトラブルといったリスクも生じやすくなります。そのため、計画段階での問題点や進行中の課題を早期に発見し、適切な対策を講じる問題解決能力が必要です。
6.プレッシャーへの耐性
プロジェクトマネージャーはプロジェクトが上手くいかなかったり、スケジュールに追われたりと、ストレスの高い状況下での作業が多いと言えます。そのため、プレッシャーに対する耐性を持てるように、常にメンタルを整えることが大切です。
PMP®資格取得のメリットとキャリアアップの関係

PMP®資格を取得すると、さまざまなメリットがあります。ここでは資格取得後のキャリアパスについてお伝えします。
プロジェクトマネージャーとしての信頼
PMP®資格を取得すると、プロジェクトマネージャーとしての専門性を示すことができるため、上司やクライアントからの信頼度が高まります。周りからの信頼度が高まれば、企業内で重要なポジションを任されたり、希望する企業に転職したりすることも可能です。
担当できる業務範囲の拡大
PMP®資格を持つことでプロジェクトマネージャーとしての実績が増えれば、担当する業務範囲も広がります。たとえば、大規模なインフラ整備や新しいシステムの開発・導入など、多くの人が関わる予算の大きいプロジェクトを任せてもらえる可能性も高くなります。
PMP®資格取得後のチャンス
PMP®資格は国際的に認知された資格なので、企業内での昇進や国内での転職だけでなく、海外での就職も有利に働くことがあります。また自身のスキルアップはもちろん、専門家としての認知度も向上するため、幅広いチャンスに恵まれるでしょう。
このように、PMP®資格には多くのメリットがあり、資格取得へのチャレンジはキャリアアップのきっかけとしてオススメです。
PMP®の受験資格と試験の難易度

PMP®資格は、プロジェクトマネジメントに関する知識やスキルだけなくその経験も有することが求められるグローバルな標準資格なので、受験には一定の条件があります。また試験の難易度はどのくらいなのでしょうか。
受験資格のハードルは高い?
PMP®の受験には次のいずれかの要件を満たすことが必要です。
- 高校卒業以上の学歴と、プロジェクトマネジメントに関連する7,500時間以上のプロジェクト経験(非リーダー)、または5年以上のプロジェクトマネジメント経験(リーダー)
- 大学卒業以上の学歴と、プロジェクトマネジメントに関連する4,500時間以上のプロジェクト経験(非リーダー)、または3年以上のプロジェクトマネジメント経験(リーダー)
さらに、35時間以上の正式なプロジェクトマネジメント教育を受けることでようやく受験が可能になります。正式なプロジェクトマネジメント教育とは、PMI®認定トレーニング・パートナー(ATP)による教育を指します。
試験の概要と難易度
試験は230分で180問の択一式問題が出題されます。日本語での受験を選択できます。
試験の合格率は公式発表がないため明らかになっていませんが約60%程度と言われています。幅広い知識が求められるため、試験範囲をすべて網羅することの難しさが特徴として挙げられます。
また類似した選択肢が出題されることも多く注意力が必要なこと、試験時間が長いため集中力の維持が課題など、試験の難易度は高い部類に入ると言えます。
PMP®試験の問題事例
下記は過去のPMP®試験で出題された問題です。
問題:
ソフトウェア開発会社のプロジェクトマネージャーは、プロジェクトで多くの財務リスクに直面しています。プロジェクトマネージャーは、リスク管理プロセスの強度と効率を頻繁にチェックする必要があります。これを達成するためにプロジェクトマネージャーは何を使用する必要がありますか?
選択肢:
A. ブレーンストーミングセッション
B. 仮定ログ
C. 監査会議
D. 利害関係者登録
問題事例からもわかるように、実際に業務を経験していないと答えられない内容となっています。
PMP®資格取得に有効な学習方法

国際的な資格とあって、決して低くない難易度のPMP®試験。資格を取得に向けて理想的な学習方法をご紹介します。
公式サイトをフルに活用しよう
PMP®資格取得にあたって、まずは本家であるPMI®(プロジェクトマネジメント協会)から正しい情報を取り入れることが最初のステップです。そのため、PMI®の公式サイトからPMP® HandbookをダウンロードしてPMP®資格取得の詳細な手順や要件、試験の内容・形式などを理解しましょう。
公式問題集や参考書を活用した学習も有効です。これらはPMBOK®ガイドから要点をまとめた構成になっているため、知識やスキルを体系的に学べます。
PMI®が提供する試験対策講座や実際の試験に近い形式で出題される模擬試験の受講もオススメです。試験対策は公式サイトをフルに活用することが最適と言えます。
PMI®公式サイト:https://www.pmi-japan.org/
独学よりも研修や講座の受講を!
試験ではPMI®が定義したPMBOK®(プロジェクトマネジメント知識体系)ガイドに載っていない内容も出題されるため、他の情報源を活用することも有効な対策です。実際、オンラインで受講できる講座やアプリもたくさんあります。
ちなみに、独学はプロジェクトマネジメントの知識・スキルが個人の経験やノウハウによって異なるので、あまりオススメできません。できるだけ専門機関から教わるようにしましょう。
まとめ
日本ではIT技術者はもとより、多くの企業でプロジェクトマネージャーが不足しています。企業の成長を促進できるデジタル人材として活躍するためにも、PMP®資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。
Winスクールでは2023年夏、プロジェクトマネージャー育成に向けて、PMI®との間で認定トレーニング・パートナー(ATP)契約を締結し「PMP®試験対策講座公開コース」を開講します。開講するにあたり、PMP®試験の合格に向けて、必要な知識を体系的に学習するための「PMP®試験対策講座公開コース【無料説明会】」を開催いたします。皆様のご参加を心よりお待ちしております。