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【上達ポイントがまるわかり!】
デザイン初心者がはじめて作った名刺をデザイナーがチェック! バランス編

【上達ポイントがまるわかり!】デザイン初心者がはじめて作った名刺をデザイナーがチェック! バランス編

こんにちは! Shinobuです。

普段はグラフィックデザイナーや講師として、大阪を中心に活動をしています。

みなさん、こんにちは!

今回から「上達ポイントがまるわかり!はじめて作った名刺をデザイナーがチェック!」と題しまして、3回連続のシリーズとして、記事を書いていきます。
第1回は「バランス」について。第2回は「文字」について。そして最終回の第3回では「データの作り方」についてチェックしていきます。

名刺づくりに限らず、制作物すべてにおいて役立つお話になっています。
ご自身で作品を作る際、何に気を付けたらいいのかが分かるようになりますよ。
現場じゃないと教えてもらえないような内容にも触れていきます!ぜひご一読ください!

Winスクール受講生さんのご紹介

今回は、現在受講中のWinスクール受講生さんである、山口英伸さん(リスキリング事業:Web&映像デザイナー養成講座受講)に、名刺を作ってもらいました。
わたくしShinobuが、山口さんの制作された名刺について、チェックをしていきますよ。

「Web&映像デザイナー養成講座」のコースでは、動画制作ソフトであるPremiere Proも受講します。
山口さんはPremiere Pro受講中に、毎週オリジナルのストーリーを考えて作品を作ってきてくださっていました。
その創造力とプロット構成力を生かし、今回は名刺づくりに取り掛かる前に、「ペルソナ」を作ってきてもらっていました。「ペルソナ」とはマーケティング用語で、商品・サービスなどの典型的な架空のユーザーを設定することです。
今回の場合でいうと、今から作る名刺の主人公を決めてもらった、ということですね。
何か作品を作る際は、このあたりの設定をしっかり行っておくと、作品にリアリティが出て、説得力もアップします。

さて、そのペルソナとなる主人公の名前は「田中翔平」さん。

井県越前市の「田中洋服店」の3代目を務める若手の社長です。地元福井の美しい自然と水が育んだ、昔ながらの縫製技術にこだわった洋服をモダンにアレンジした服作りが好評で、現在は東京のセレクトショップから引っ張りだこという実力派ボーイです。
ネット販売が安定してきたこのタイミングで、福井でお店を開こう!というあらすじ。


この世界線で名刺を依頼された山口さんは、どのようなデザインに仕上げたのでしょうか。

田中洋服店の名刺

制作の意図

山口さん:
頭の中で「モダン、モダン」と唱えながら作ってみました。
和モダンっぽく、配色の元ネタは竹久夢二です。淡い紅色もどこかに入れたかったんですけど、「名刺はあんまり色をたくさん使わない」と、調べたら書いてあったので、とりあえずおさえました。
それからデザインを考える中で、「名刺」というもののイメージがあまり自分の中にないということに気が付いて、困りました。名刺はオフィシャルな場で渡すものだから、きちんとしていないといけないし、でも、若手のアパレル企業ということを考えると硬すぎるだろうし…そしたら、どこまで遊びを入れたらいいのかとか、わからなくなってしまって。
あとは、これまでに習ってきたIllustratorのソフトの使い方の基礎が大事だなと実感しました。
「こうしたいんだけど、確かなんかやり方があったはずだよな…」と、やり方を模索するのにとても時間がかかりましたから。

演出したい世界観は表現できているか

では、チェックをしていきたいと思います。
山口さんのおっしゃる、「名刺のイメージがあまりない」ということは、モノづくりをする際にみんなが共感できる悩みの一つなのではないかなと思います。
まったく初めてのものを作る、となると、身近な物であっても、実はよく見たり分析したり、研究したりしたことは無いはずです。
例えば、「お店で食べた欧風カレーを再現したいな!カレー作り自体初めてだけど、やってみよう!」となった時に、あなただったら、まずは何をしますか?

いきなり具材を買ってきたり、調理を始める…なんてことはできませんよね?

まずは、「調べ」ますよね?

ほとんどの人にとってカレーは馴染みのあるメニューだと思いますが、「同じように作ってください」と言われたら困ります。
だって食べている時って、「わー!おいしー!おいしー!お肉がとろける~!」という「感覚」で味わっているんですもの。……私は、ですけど(笑)
ここで「しっかり炒めたあめ色玉ねぎに、なめらかな野菜ペースト!赤ワインでひと煮立ちさせた柔らかい牛肉。味の引き立て役として桃を隠し味に入れるとは…!」などと分析しながら食べることができる人は、料理家か美味しんぼの山岡士郎くらいじゃないかな…。

というように、デザインも同じであって、まずは「分析し、引き出しを増やす」ことから始めます。
普段から身の回りの物を、よ~く見て考えるんです。
「このデザインは、誰に何を伝えたいのか?どうしてこの色を使ったのか?」などなど。
そう、デザイン界の山岡士郎になるのです!(?)

みなさんは、おしゃれなデザインを見て、「わー!かっこいいー!素敵~!」と思うでしょう。
ここまでで終わるのが消費者。
デザイナーであるならば、もう少し時間をかけて「どうしてこの写真を選んだのかな…?」と、考えてみましょう。
私は一時期、メジャーや級数表(印刷物のフォントサイズを計るシート。下記図がそれです。)を持ち歩いて、ポスターとかサインのサイズを計っていました。えぇ、不審者ですとも。でも気にしない、気にしない。
建築とかプロダクトの人だって、メジャー持ち歩いてますもんね。私だけじゃないはずです。

今回、山口さんが表現したかった「和モダン」は、配色の参考として「竹久夢二カラー1」を意識した、とありました。

  1. 明治時代の画家、竹久夢二の作品に使われている配色のことを指しています。「竹久夢二」でWeb検索してみてください。 ↩︎

実際はこのあたりの理由をもう少し深堀りしたいところです。もしかしたら田中洋服店の人気商品として、竹久夢二のパターンが採用されているということならかなり説得力がありますね。
「和モダン」の選択肢は他にもたくさんありますから、「何を伝えたいかがパッと見てわかる」ようにするといいでしょう。

伝えたかった「田中洋服店の和モダンとは?」
そもそも、伝えたい「田中洋服店のイメージとは?」

この部分を考えるのが、デザインのスタートです。ゴールから設定するんです。
ここがしっかり定まらないと、ゴールとは違う方向に走ってしまいます。

はじめは、「デザイン=見た目」と考える人が多いですが、実際は違います。
おしゃれなものを作るのがデザイナーの仕事ではありません。
「伝えたい情報を、伝えたい相手に伝えること」がデザイナーのお仕事なのです。

フォントの大きさやバランスはプリントアウトして判断する

みなさん「フォントサイズってこれでいいのかな…?」って、何か作っている時に思いませんか?
一応、アートボードにレイアウトし、相対的に見て「こんなもんかな…」と作ってしまうことが多いかと思います。
モニターだけで作業をしていると、このあたりの感覚ってわかりづらいものです。

そこで。

「まずはプリントアウトしてみましょう!」

そうなんです、プリントアウトしてみたら答えがすぐわかります。
これ以上説明はいらないと思います。自分の目で見てください。
(印刷は、まずはおうちのプリンターやコンビニで印刷してみてくださいね。)
だいたい、ですが、多くの人はプリントされたものを見て、「文字でか!…なんなら画像とかロゴもデカ!」ということに気が付くはずです。
そしたらね、これまでモニターとにらめっこして作っていた時に「あ~、なんか文字入りきらないなぁ。この画像デカすぎるねん。けど、画像はこのくらいのサイズほしいし…。しかたない、文字よ、この辺に収まっといてくれ…!」と、妥協に妥協を重ねてレイアウトしていたそのお悩みが吹き飛ぶはずです。
だって、だいたい全部のオブジェクトが大きめに作ってあるはずですから。

それでは田中洋服店の名刺を見てみましょう。

名前が大きい印象です。
見やすくて良いのですが、名前の上・店名の領域と、名前の下・住所の領域、それぞれが窮屈そうな印象を受けます。
もう少し名前のポイント数を落とすと、上・中・下のそれぞれの領域に余裕が出てスッキリするはずですよ。

全体的に、他の文字については1ptずつ落としていただいても大丈夫そうです。
山口さんが今回作った名刺の文字サイズは、ほとんどがリアルなサイズでした。仕上がりをよくイメージできておられると感じました!

デザインの4原則

「デザインの4原則」って、聞いたことありますか?
お恥ずかしながら、私は講師になってから知りました。

初めて知ったとき、「そうだわ、無意識にこの4つに気を付けて作ってるわ!」と、赤べこのように頷いたのをよく覚えています。

ということは、作っている時や仕上げた時に、デザインの4原則が守られているかどうかをチェックすれば「バランスの良いものが作れる」ということなのですよね。

近接

「関係のあるものは近くに配置する」のが近接です。

名刺を見てみると、店名・名前・住所と、3つの領域に分かれているのがパッと見てわかります。
特に、名前の部分。肩書きである「代表取締役社長」が名前に寄り添っていますよね。これ、近接ができています。一番上の「田中洋服店」の店名と英字も近いですが、ちょっと近すぎましたかね。

住所ですが、住所と電話とメールのそれぞれの行間と、住所の領域の外側の余白部分がバラバラなのが気になります。「99-1」の前に全角が空いており、この番地はどちらかというと、インスタのロゴの方に近く配置されているように見えますね。「越前町」に寄せてあげるといいでしょう。

文字の表記や全角・半角の使い方などは、次回の「文字編」にて改めてお伝えします。

整列

「オブジェクトの位置を揃える」のが整列です。

山口さんが作った名刺で素晴らしいのは、この整列がキチンとできていることです。
店名や名前など、アートボードに対してしっかり中央に揃えてありますね。
また、住所・電話・メールの左側も、きれいにそろっています。

ここまで綺麗にそろえてありますから、どうしてもインスタのロゴの位置が気になる…!
メールの位置から落ちているので、余白がそろわずにガタガタに見えてしまうんですね。
この部分が揃えられるようにレイアウトすると、もっとブラッシュアップできますよ!

反復

「同じカテゴリのものは繰り返す」のが反復です。

名刺だと情報が少ないので、反復がないように見えますが、今回の場合だと、住所の領域になります。
また改めて次回の「文字編」でもお話しますが、「TEL:」「mail:」は表記が統一されているのに、住所の行頭には「住所:」がありません。この3行は「反復」の考えを使って、並列にしてあげるといいでしょう。

また、インスタのロゴの置き場にどうも困っている様子がレイアウトから伝わってきました。
これは提案ですが、インスタも住所の3行に加えて4行目に置いてあげたらバランスが取れると思います。
連絡先として、住所や電話番号などと並列の扱いにするのです。
スペースが開いているから配置する、という考えを優先してレイアウトしてしまうと、「なんか違うな…」という結果に陥りやすいです。
まずは、どの情報とどの情報を並列に扱うか、どの情報を目立たせるか、優先順位を決めてから作り始めましょう。

強弱

「重要なものは強調する」のが強弱です。

反復でもお話したように、「優先順位を決めてから作る」ことは鉄則です。
「相手に読んでほしい順に大きさを決める」ということですね。

山口さんが作った名刺では、ほとんどこの優先順位ができていました。
まずは名前が目に入りますよね? 名刺は、まずは自分の名前を覚えてもらうためのものですから、名刺の目的を果たしていると言えますね。

また、名前と肩書きには、10ptの差がありました。しっかりと強弱の差をつけて対比させることにより、「メイン」と「サブ」を分けて伝えることができていますね。

さらにブラッシュアップを目指すなら、店名とインスタのロゴを対比させてみましょう。
どちらもロゴ、と扱った場合、目立つのはどちらでしょうか。
大きさや線の太さや色を比較してみてくださいね。

最後に…

いかがでしたか? 今回は、デザインにおける「バランス」に注目してお話をしました。

名刺は初めて作品づくりをするのに、とてもいい題材です。
今回の山口さんの作品のように、画像は使わず、まずは文字だけで作ってみてください。

たかが名刺、されど名刺。 91×55mmの小さな手のひらサイズの世界について、あと2回分もお伝えしたいことがあります。
続きをどうぞおたのしみに!

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