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「それってハラスメントです」部下をやる気にする指導法

投稿日
2023.02.10
更新日
2023.05.12
「それってハラスメントです」部下をやる気にする指導法

国が働き方改革を促すようになって以来、企業内で起こるハラスメントはメディアで報道されることが多くなり、企業イメージの低下につながっています。注意喚起が必要と感じて放った何気ない一言でも、言われた側がひどく傷つくことは少なくありません。

職場内の人間関係をギクシャクさせないためにも言葉遣いは非常に大切です。この記事では、企業で管理職や指導する立場の社員が知るべきハラスメントと効果的な指導法をお伝えします。

それってアウトです!社内で周知すべきハラスメントの種類

しつけや相手を気遣ったつもりの一言が、実はハラスメントに抵触していた!というケースは意外と多いのではないでしょうか。良好な人間関係を構築するために、企業はハラスメントについての周知が必要です。

そもそもハラスメントとは?

ハラスメントとは性的や社会的な嫌がらせによって苦痛を与える行為です。男女雇用機会均等法が制定された1980年代後半くらいから、女性の職場進出に伴いセクシャルハラスメント(以下セクハラ)という言葉が飛び交うようになりました。

そして近年はパワーハラスメント(以下パワハラ)やモラルハラスメント(以下モラハラ)、マタニティハラスメント(以下マタハラ)など、ハラスメントの被害に苦しむ従業員の声がSNSやインターネットの掲示板で広がり、メディアでもたびたび取り上げられようになりました。

またハラスメントを受けた従業員の中にはうつ病を発症したり、パニック障害や適応障害になったりして、就業できなくなるケースが少なくありません。こうした状態は生産性の低下につながるので、企業としては何としても回避したいところでしょう。

ハラスメントは減っていない

実際に、職場でよくあるハラスメントはどのようなものでしょうか。厚生労働省の調査ではパワハラやモラハラ、マタハラの相談件数が過去3年間でほとんど減っていないという結果が出ています。

ハラスメントが起こる原因はさまざまですが、上司と部下のコミュニケーション不足や極端に失敗が許されない労働環境、ハラスメントに対する周知がされていないことが主な原因でした。

またセクハラの相談件数は減少傾向にあるものの、ハラスメント防止の取り組みをしていない企業ほど、ハラスメントを経験した従業員は多い状況です。

情報元:2021年度 厚生労働省(外部委託)ハラスメントに関する実態調査(PDF)

ハラスメントの種類

それでは具体的にどのような言動がハラスメントになるのでしょうか。ハラスメントの種類を交えて解説します。

パワハラ

立場や権限を利用した嫌がらせで、最も相談件数の多いハラスメントです。悪質なケースでは暴言や罵倒、脅迫と言える事例が少なくありません。

上司や先輩は教育のつもりかもしれませんが、労災や離職、さらには裁判に発展する恐れもあるため要注意です。

パワハラ発言の事例「お前、何やってるんだ。バカか!」「早く辞めちまえ」「新人以下の給料泥棒」

セクハラ

性別や年齢、容姿などについて業務と関係のない発言をしたり、身体を触ったりして不快にさせる行為です。昨今は男性が女性に対して行う以外に、女性が男性に対してや同性どうしというケースも珍しくありません

とりわけ性別による偏見(「男なんだからもっと飲め」や「女性社員は出社したらコーヒー入れて」のような発言)はジェンダーハラスメントという言い方をする場合もあります。

セクハラ発言の事例「〇〇ちゃん、もう若くないんだから〇〇したら」「一体いつデートしてくれるの(しつこい勧誘)」「だから女性(男性)はダメなんだよ」

モラハラ

故意に人格を否定したり、できない作業を担当させたりして精神的な苦痛を与える行為で、いじめと言っても過言ではないでしょう

モラハラ発言の事例「(故意に)それはお断りします」「あなたの意見は聞いていません」「(ベテランが3日かかる作業を新人に対して)これ、今日中に片付けてください」

マタハラ

妊娠や出産、育児休暇に関わる嫌がらせや不当な扱いのことで、場合によっては法令違反となるケースがあります。また仕事と子育ての両立を阻害する要因にもなっていると言えます。

マタハラ発言の事例「〇〇さん、子育て大変でしょ。家庭に専念したらどう?」「〇〇さん、1日〇時間しか働けないので、この仕事は他の社員にお願いしました」「妊娠ですか、では来週から〇〇部に異動してください」

スメルハラスメント(以下スメハラ)

これは匂いの英語が語源となっている言葉で、口臭や体臭によって周囲を不快にさせることです。食べものやタバコの匂い、ワキガだけでなく、香水や柔軟剤などの匂いにも気をつけましょう。

とりわけ接客業では以前から常識とされていましたが、コロナ禍を経た今、清潔感を保つことは健康面からも非常に大切です。

このように、企業内ではさまざまなハラスメントが発生しているため、上司や指導する立場の方や人事担当の方は特にハラスメントの知識が求められます。

ハラスメントは百害あって一利なし

ハラスメントは職場単位に留まらず、企業全体のイメージに影響するため、起こって良いことは一つもありません。

ハラスメントが及ぼす悪影響

ハラスメントを受けると、さまざまな部分に悪い影響を及ぼします。たとえば、ストレスや不安、自己嫌悪といった精神的なダメージです。

そして心の健康が保たれなくなれば、体の不調につながり、やがては欠勤や休職を繰り返すことになりかねません。そうすると、昇進や昇給など、キャリアにも傷がつきます。

またハラスメントが起こると職場での人間関係が悪化するため、不信感を抱く社員が増え、結果的に企業イメージの低下を招くでしょう。

ハラスメントをした者の末路

ハラスメントを行った側はどのような処遇になるのでしょうか。一般的に、企業側は人事部からの警告や研修の受講などにより、ハラスメントを止めさせようとします。

しかし、悪質な場合や再発防止のために減給や解雇といった処分もあり、その処遇は法令や企業ポリシーなどによって異なります。

そんな言葉じゃ部下は育たない

先ほどお伝えしたように、ハラスメントの中で最も相談件数の多いパワハラは、ミスをした部下のしつけと考える上司が散見されますが、パワハラ発言事例のような言葉で部下が育つわけがありません。

もちろん、何でもかんでも褒めれば良いというものではありませんが、部下が働きやすく能力を発揮しやすい環境をつくることは上司としての責任です。仕事上は上下関係があるかもしれませんが、人間としては対等なので、言葉遣いには十分注意しましょう

ハラスメントは故意や過失でなくても、された側は嫌な思いをします。職場の人間関係は仕事のパフォーマンスにも影響するので、相手の気持ちや立場を考えた声がけが大切です。

「叱る」と「怒る」は似て非なるもの

教育現場において、時には叱る場面があるでしょう。しかし、「叱る」と「怒る」は全く違います。

「叱る」と「怒る」は何が違う?

叱る」と「怒る」は部下や他の人から見た指導者の言動の違いを示しています。

「叱る」は適切な言葉を用いて批判することで、改善を促したり、アドバイスを伝えたりすることが目的です。一方、「怒る」は激しい不満を表すことを意味します。

つまり、「叱る」は適切な指導の一環であり、「怒る」は指導者の感情的な反応です。そのため、上司が指導と称して部下に怒るのは相応しくありません。

ミスを改善する理想的な叱り方

部下に対してハラスメントにならない叱り方は、具体的な行動や結果に焦点を当てることです。たとえば、「〇〇さんのレポートにはグラフが足りない」というように、具体的な問題点を指摘します。

解決策を提示し、一緒に解決することも大切です。たとえば「遅刻を防ぐには時間管理が大切です。次の作業開始を知らせる自動メールを設定してみてはいかがですか」のようなアドバイスをします。

また叱るときは言葉遣いに注意が必要です。例として「あなたは間違っている」ではなく「このアイデアは〇〇が〇〇なので上手くいかない可能性がある」のように、上司としての責任がある発言を心がけましょう。

やってはいけない叱り方

部下に対して、次のような叱り方はやってはいけません。

  • 個人的な問題を持ち出して攻撃する
  • 不適切な言葉で批判を繰り返す
  • 過剰な期待をかけてムリをさせる
  • 周囲が見ている場所で批判する

これらの叱り方は部下のモラルや信念に悪影響を与え、一歩間違えばハラスメントになりますので、十分注意が必要です。

部下を叱るということは、部下の成長を促し、仕事の生産性を高めることです。そのためにも「叱る」と「怒る」の違いをきちんと認識して正しい人材育成を行いましょう。

部下に対する効果的な指導法とは?

上司として部下のパフォーマンスを最大限に発揮させるにはどうすれば良いのでしょうか。ハラスメントを防止し、企業全体の生産性を上げる指導法をお伝えします。

部下が自発的に行動するコーチング

部下の能力を向上させ、彼(彼女)らが自発的に行動できるようにするにはコーチングが有効と言われています。コーチングとは対話によって相手の自己評価を高めることです。

とりわけ部下がミスをしたときは、責任を追及するのではなく、ミスを冷静に受け入れられるように優しく接します。

そして、適切なアドバイスやトレーニングを施し、次は頑張ろうと思えるポジティブな環境を整えるのです。こうした建設的なフィードバックを施すことで、部下だけでなく職場全体の士気が高まります。

部下のやる気を引き出す言葉

具体的にどのような言葉をかければ部下のやる気を引き出すことができるのでしょうか。実際に部下が遭遇しそうな場面別にご紹介します。

  • 仕事に対して次の行動がわからない場合「その仕事のゴールは何ですか?ゴール達成のためにやるべきことを考えてみましょう」
  • ミスをしてしまった場合「〇〇さんらしくなかったですね。次は頑張りましょう!」
  • 一人で抱え込んでいる場合「判断に迷ったら気を遣わずに相談してください」
  • これから対応する作業に半信半疑の場合「大丈夫!〇〇さんなら必ずできます」

このように、上手くいくことを前提とした言葉をかけることで、部下の不安は期待へと変わります。

コーチングで生産性が向上する

コーチングはスポーツの世界でよく使われる言葉ですが、ビジネスの現場でも生産性が高まるとして、すでに多くの企業が導入しています。部下の生産性を高めるのは上司の役割です。

部下自身が自己評価を高めて自発的な行動ができるように、日頃からポジティブな言葉遣いを意識しましょう。

おわりに

職場で起こるハラスメントの多くは相手を気遣ったつもりが傷つけてしまったり、期待するがゆえにムリを強いてしまったりと、「叱る」と「怒る」の認識の違いがきっかけとなっている可能性が高いと言えます。とはいえ、教育とハラスメントは紙一重です。

管理職や指導する立場の方は法令遵守の下、その言動には十分注意するとともに、正しい部下の育成方法を知って、企業全体の生産性を高める努力が必要不可欠と言えます。

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