企業が成長を続けるためには、従業員や顧客、株主をはじめとするステークホルダー(利害関係者)に向けて明確な方向性を示すことが重要です。またそのために必要なのが、パーパス・ミッション・ビジョンという3つの概念。
しかし、これらの言葉は混同されることがよくあります。そこで本記事では、それぞれの定義や特徴の違いを解説し、企業にとってパーパスがもたらす効果やそのつくり方、事例などを紹介します。
パーパスとは?
パーパスとは、企業や組織が存在する目的や理念のことを指しますが、これは単なる利益追求のためだけではありません。まずはパーパスの全体像を理解することが大切です。
パーパスの定義と特徴
パーパスとは、具体的にいうと「なぜその企業や組織が存在しているのか」や「社会に貢献するためにはどのような価値を提供することが目的なのか」を示すことです。つまり、パーパスは企業や組織が持つべき方向性や目標を示し、社会において存在意義を持つための基盤となります。
またパーパスは企業文化に大切な要素の一つとして位置づけられ、従業員のモチベーション・顧客満足度・業績などの向上とも密接な関係があると言えます。
パーパスが注目を集める理由
近年、パーパスが注目を集める理由は、社会の価値観が変化したことが挙げられます。かつての企業は利益追求が最重要課題であり、社会的責任はあまり考慮されていませんでした。
しかし、現在は社会のニーズや顧客の期待が変化しており、企業に対する社会的責任の重要性が高まっています。SDGs(持続可能な開発目標)はその典型と言えるでしょう。
また、世代別の価値観が変化していることもパーパスが注目されている理由の一つです。たとえば、Z世代と呼ばれる人の多くは、企業の価値観や社会貢献度を重視していて、パーパスへの共感と就職や購買行動が相関すると言えます。
※参考:https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/about-deloitte-japan/genzmillennialsurvey.html
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2018/ec095202b7547790/ny201810.pdf
ミッション・ビジョンとは何が違うの?
パーパスと同様にミッションやビジョンも企業や組織が自己理解を深め、目標を設定するための重要なコンセプトですが、パーパスと一体何が違うのでしょうか。
ミッションの定義と特徴
ミッションとは、企業や組織が何を行っているのか、何を目指しているのかを示す声明文のことです。ミッションは企業の業務内容や活動目的を表現し、企業の社会的責任を果たすことを目的としています。
またミッションは、顧客からの共感を集めるために、ブランディングやマーケティングに利用しやすいのも特徴の一つです。
ビジョンの定義と特徴
ビジョンとは、企業や組織が将来的にどのような存在になりたいかを表すもので、長期的な目標を示します。ビジョンは企業の理想像を表現し、明確な目標設定や戦略策定のために用いられるのが特徴です。
またビジョンは、従業員や株主をはじめとするステークホルダーに対して、企業の活動方針を示すものとして利用されることもよくあります。
パーパスとの比較
パーパス・ミッション・ビジョンは似て非なるものです。実際、パーパスは企業の存在意義や社会的責任を、ミッションは企業の業務内容や社会的責任、ビジョンは長期的な目標を表現します。
企業はそれぞれのコンセプトを明確にし、ステークホルダーと共有することで、一体感や意思決定の効率を高めることができます。
パーパスの重要性と効果
パーパスの定義やミッション・ビジョンとの違いを理解したら、いよいよパーパスの本質に迫ります。
明確な目標の共有
パーパスは従業員に共通の前提を与える意味で非常に重要です。なぜなら、パーパスは企業が何を目指すかという方向性を明確に示すものなので、従業員がそれを共有することは行動の指針となります。つまり、従業員が一丸となることで、企業全体として同じ目標に向かって取り組むことができるのです。
顧客との共感
パーパスには顧客との一体感が生まれる側面もあります。実際、顧客に共感されるパーパスであれば、顧客は企業に対して好意的なイメージを持ち、信頼感を抱くようになります。そのため、共感を生むパーパスは業績の向上につながる可能性が高いと言えます。
モチベーションの向上
パーパスには従業員のモチベーションを高める影響力もあります。これは従業員の取り組む仕事の意義や存在価値をきちんと示すことで、彼(彼女)らは自分たちの仕事にやりがいや喜びを感じやすくなるからです。モチベーションの向上は離職率の改善につながるので、よりパーパスの重要性を実感できるでしょう。
企業の成長促進と社会貢献
パーパスが明確であるほど、企業はそれに合わせたビジネス戦略を立てることができるため、企業の成長促進につながります。また、パーパスが社会貢献を意識したものであれば、従業員の社会貢献に対する意識が高まり、結果的に社会的責任を果たすことが可能です。
このように、パーパスは企業が成長し続けるための効果が期待できる重要なものであり、企業の経営においてパーパスの設定は必要不可欠と言えます。
パーパスのつくり方と企業事例
それでは実際に、パーパスはどのような手順でつくれば良いのでしょうか。ここではその設定プロセスと企業のパーパス事例をご紹介します。
パーパスの設定プロセス
(1)企業の目的を明確にする
企業が一つの組織として「何を目指しているか」を明確にすることがパーパスづくりの第一歩です。そのため、まずは企業のゴールをはっきりさせましょう。
(2)ステークホルダーの再認識と考慮
ステークホルダーは企業にとって重要な利害関係者を指しますが、顧客や従業員・株主以外にも行政や金融機関・地域社会など、事業内容によって幅広いステークホルダーが存在します。そのため、パーパスにはステークホルダーが求めるものや期待することを盛り込む必要があります。
(3)企業の価値観と強みの棚卸し
パーパスは企業が重視することや提供する商品・サービス、従業員の能力や技術、ブランド価値など、さまざまな要素から構成されます。これらを反映させるためにも企業の価値観や強みを棚卸しすることが大切です。
(4)パーパスを設定する
(1)から(3)の手順を踏まえて(企業のゴールに対し、ステークホルダーに配慮した内容と価値観や強みを肉付けして)、いよいよパーパスを設定するのですが、パーパスはわかりやすい言葉で表現することが望ましいでしょう。
企業のパーパス事例
2008年に創業し、民泊のオンラインマーケットとして世界的に観光産業を支えている企業の一つAirbnbのパーパスは、「誰もが、どこでも『居場所』がある世界をつくる(Creating a world where anyone can belonging, anywhere. )」です。
世界的に移動が制限されたコロナ禍を経て、同社のパーパスは現代社会における存在価値がしっかりアピールされていると言えます。
※情報元:Airbnbホームページ及び「airbnb purpose」の検索で表示される上位サイトからの総合的判断
おわりに〜パーパス経営と人的資本経営
企業が社会とのつながりを強め、顧客や従業員だけでなく社会全体からの信頼を得るためには、パーパスに重点を置く経営(パーパス経営)が欠かせません。
パーパス経営は、同じく近年注目されている人的資本経営とは異なりますが、「社会の信頼を得るために行う」ということに関しては一致しています。
また両者は従業員の意識や行動に大きな影響を与えるため、良質な企業文化の形成という意味では多くの共通点があります。
社会で愛され親しまれ、信頼されるパーパスをつくり、企業の成長戦略に生かすことが現代経営において最も大切なことです。
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