

こんにちは! Shinobuです。
普段はグラフィックデザイナーや講師として、大阪を中心に活動をしています。
AfterEffectsを学びはじめた方に知っておいてほしい仕組みついて、作って理解できるチュートリアルをご用意いたしました!
ぜひチャレンジしてみてくださいね。
※わたしはMacでAfterEffects Var.24.6.3を使用しています。
目次
ヌルオブジェクト
ヌルオブジェクトの「ヌル」という言葉は、「NULL」とも表されるもので、Excelなどを使っている人だとピンと来る方もおられるかもしれませんね。
ヌルとは、「何もない」「空っぽ」の状態を表す言葉で、AfterEffectsで用いるヌルオブジェクトも、挿入をすると何もないレイヤーが表示されます。
実際には視覚的に分かりやすいように、このような100×100pxの透明な正方形が表示されることになります。

この透明なレイヤーは、複数のオブジェクトを一緒に動かす際に、その効力を発揮します。
今回はヌルオブジェクトを使ったチュートリアルにチャレンジして、使い方を落とし込んでいきましょう。
チュートリアル1「タイトル文字」
いまから親子関係を使って作る動画は、こちらです。
※文字の動きだけをチュートリアルで再現します。
テキストを設定する
(1)新規コンポジションを作成します。
メニュー「コンポジション」>新規コンポジション を選択し、以下のように設定します。 プリセット「HD・1920 x 1080・29.97fps」
デュレーション「0;00;04;00」(4秒)

(2)2行の文字を入力します。ここでは「WIN SCHOOL」で作っていくので、まずは「WIN」と入力をします。フォントの種類や大きさなどはお好みでかまいません。

(3)アニメーションをしていくことになるので、この時にアンカーポイントの位置を確認しておきましょう。
現在は文字の中央下部にアンカーポイントが設定されています。
アンカーポイントは、拡大縮小や回転を行う際の軸足となる部分でしたね。
文字の中央に設定します。
ショートカットキー【Ctrl+Alt+Homeキー】Macの場合は【Option+⌘+fn+←キー」でアンカーポイントが中央に揃います。

(3)2行目の文字は、せっかくアンカーポイントを整列させた1行目を複製して文字を入力し直した方が早く編集できそうです。
まずは「WIN」レイヤーを選択し、【Ctrl + Dキー】で複製します。
同じ場所に複製されますので、そのままコンポジションパネル上で直接文字を下にドラッグしてずらしておきましょう。

(4)複製したレイヤーを、2行目の文字に入力し直します。

文字にアニメーションをつける
では、アニメーションをつけていきます。
2秒10f(2秒10フレーム)で、「WIN」は右へ、「SCHOOL」は左へと移動するアニメーションです。
(1)まずは再生インジケーターを2秒の位置に移動させておきます。
それぞれのレイヤーの位置プロパティを開き(レイヤーを選択して【pキー】)、位置のストップウォッチアイコンを押してアニメーションをONにします。

(2)次に、2秒10f(0;00;02;10)の位置に移動します。
1行目をコンポジションの右側、2行目をコンポジションの左側に、見えなくなるように思い切り水平移動しておきます。

ここまでの動きを確認しておきましょう。
文字全体にアニメーションをつける
基本的な動きはここまででつけることができたので、これからヌルオブジェクトを使って2つのレイヤーを動かしていきましょう。 (1)メニュー「レイヤー」>ヌルオブジェクト を選択し、ヌルレイヤーを作成します。

ヌルオブジェクトができました。

(2)ヌルオブジェクトの動きに合わせてテキストを動かしたいので、テキスト2つとヌルオブジェクトを親子関係にします。「WIN」と「SCHOOL」レイヤーそれぞれの「親とリンク」から「1.ヌル1」を選択します。
※「親とリンク」が見当たらない人は、「レイヤー名」などが書いてある列を右クリック>列を表示>親とリンク を選択すると、列に表示されます。

(3)文字は、回転しながら拡大していきます。
まず、拡大するアニメーションをつけていきます。
アニメーションをつけるレイヤーはヌルオブジェクトです。
ヌルレイヤーのスケールプロパティを開いて(レイヤーを選択して【sキー】)、0秒で0%、10fで100%にします。

(4)次に回転をかけます。
回転プロパティを開いて(レイヤーを選択して【rキー】)、0秒でアニメーションをON、10fで3回転と15°(3x+15.0°)と設定します。

これで完成です!
2つのレイヤーに、回転とスケールを一度に設定することができました。
この部分を各レイヤーで編集しようとすると、角度やタイミング、位置などを細かく調整しなければならないので、非常に手間なことがわかります。
使い始めは効率の良い編集方法にたどりつくには時間がかかると思います。
まずは各レイヤーごとに編集しておくと良い動き、まとめておくと便利な動きがあるということを知っておいてください。
意識をしながら編集していくだけで、まちがいなく上達につながります。
チュートリアル2「トラッキング」
次に作るのは、目標物を追従するという動きです。
以下のように、動いている物に対して文字などを追いかけさせる、動画などでよく見る表現ですね。
※ここで使用している動画素材は、Pixabay(https://pixabay.com/ja/videos/)のものを使用しています。
フッテージを配置する
(1)まずは新規コンポジションを作成します。
メニュー「コンポジション」>新規コンポジション を選択し、以下のように設定します。
プリセット「HD・1920 x 1080・29.97fps」
デュレーション「0;00;07;00」(7秒)

(2)プロジェクトパネルに、使いたいフッテージを読み込ませます。
読み込ませたら、ドラッグしてコンポジションに配置しておきましょう。

トラッキングを行う
(1)では、船の動きを追いかけて記録していきます。
そのためにトラッカーパネルを開いておきましょう。
メニュー「ウィンドウ」>トラッカー を開きます。

こちらがトラッカーパネルです。

(2)トラッカーパネルの「トラック」をクリックします。
すると、レイヤーパネルが開き、トラックポイントが表示されます。

(3)トラックは、トラックポイントを置いた場所のピクセルの明暗を自動で判別し、追従してくれる機能です。
トラックポイントの中心は、なるべく色の明暗がハッキリしたポイントを探して設定すると良いでしょう。

(4)トラッキングはトラックポイントを基準に自動で行ってくれますが、トラックポイントからターゲットが外れてしまった場合、その都度自分の手で軌道修正できるようにしておくと便利です。
トラッカーパネルの「オプション」を開き、一番下の項目のリストから「トラッキングを停止」を選択します。
トラックポイントの範囲から、ターゲットにしていた部分が〇%外れてしまった場合は、トラッキングを停止してくれます。 オプションが設定できたらOKボタンをおしてオプションを閉じ、トラッカーパネルの「▶(再生方向に分析)」をクリックします。
ただちに、トラッキングが開始されます。

(5)再生をし、最後まで止まらずにうまくトラッキングが終了する場合もありますが、多くの場合は途中で止まります。
止まった場合はトラックポイントの範囲がズレてしまっているということなので、都度、手動でドラッグしてトラックポイントを軌道修正してあげます。
修正ができたら、再度「▶(再生方向に分析)」をクリックします。
そしてまた止まったら軌道修正する…の繰り返しです。

ヌルオブジェクトと紐づける
(1)トラッキングが終わったら、このトラッキングした軌跡をオブジェクトと紐づける必要があります。
ここではヌルオブジェクトに紐づけたいので、メニュー「レイヤー」>新規>ヌルオブジェクト を選択します。

(2)では、いま作ったヌルレイヤーに、トラッキングした情報を紐づけていきます。
トラッカーパネルの「ターゲットを設定」をクリックします。
レイヤーから「1.ヌル1」を選択し、OKします。

(3)ここで忘れてがちなステップ。適用をするという作業です。
トラッカーパネルの「適用」をクリックし、出てきたオプションをそのままOKします。
これで、記録したトラッキング情報が、ヌルレイヤーに紐づきました。

仕上げ
(1)さて、ヌルレイヤーはまったくの透明ですので、このまま終わっては意味がありません。
トラッキング情報はヌルに紐づいたので、今度は追従する矢印を作りましょう。
画面上にテキストで「↓」と入力し、追従させたい位置に配置します。

(2)最後に、トラッキング情報が紐づいているヌルに対し、親子関係を結べば完成です!

今回はシンプルな矢印のみを追従させましたが、データを分析するような線が船からビーっと伸びて、船のスペックをピピピと表示させる…のようなアニメーションを追従させることも可能です。
ヌルオブジェクトを使えば、複数のレイヤーを一度に追従させるということが簡単に実現できるのですね。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
ヌルオブジェクトは、複数のオブジェクトをまとめて扱いたい際に使用する、という意味が、体感で落とし込めたかと思います。
ヌルはカメラレイヤーなどにもよく使われるものですが、まずは初心者さんは上記のようなベーシックな使い方を身に着けていただければと思います。