
WordやExcelで事務作業をしていても、フォントを選択するシーンはよくあります。その種類の多さに戸惑った人も多いのではないでしょうか。デザイナーは好き嫌いで使うフォントを決めているのではありません。そのデザインに適したベストなフォントが使われています。多くのフォントの中から適切なフォントを見つけるために、まずはフォントの基礎知識を学びましょう。
まずはざっくりと分類してみよう
~日本語フォントの種類~
日本語フォントは主に以下の種類に分けられます。

「明朝体」と「ゴシック体」が標準書体と呼ばれ、文章の見出しや本文などでよく使用されます。標準書体ではないフォントには、筆で書いたような「楷書体」や「隷書体」があります。和風なデザインの見出しやキャッチコピーに使われることが多いです。また、「ポップ体」は名前の通り、お店のポップなど、目を引くものに使用されます。
~欧文フォントの種類~
欧文フォントも日本語フォントと区別の仕方は似ています。

日本語の明朝体に近いものが「セリフ」、ゴシック体に近いものが「サンセリフ」です。スクリプト書体と呼ばれる、手で書いたような雰囲気のフォントもあります。「Comic Sans」であればポップなデザイン、筆記体の「English」であれば伝統的なデザインの見出しやキャッチコピーによく使用します。他にも、中世ヨーロッパで使用されたようなイメージの「ブラックレター」と呼ばれるフォントに分類することができます。
欧文フォントは文字数が少ないため、フォントの種類が豊富にあります。日本語だと、フォントデザイナーは何千種類も文字をデザインしなくてはいけませんが、欧文フォントは文字や記号、数字を合わせても数百程度で足りるので、欧文フォントの方がデザインのバリエーションが豊富に揃っています。
フォントデザインがいかに重要か
~企業の顔もフォントで表現~
企業ロゴには、イラストで表現する場合と社名を文字だけで表現する場合があります。文字だけで表現する場合は、フォントをそのまま使用しているケースが非常に多いです。

たとえば、Panasonicであれば、「Helvetica」というフォントで「Panasonic」と打ち込めばそのまま企業ロゴになります。このように、欧文フォントにはデザイン性の高い優れたフォントが多く、そのまま企業ロゴとしてよく用いられています。
フォントの使い方で印象が変わる
次に、文章の文字組におけるフォントの使い方を見てみましょう。

左の例に比べて、右の例は少し違和感があるのではないでしょうか。
左は、見出しにゴシック体の太字、本文の明朝体の細字を使用しています。これはよく使われるパターンです。見出しは視認性を考えて、パっと見てパっとわかることが重要なので、ゴシック体の太字が適しています。しかし太字が長く続くと文章としては読みづらいので可読性が下がります。その場合は明朝体にすることで読みやすくなります。
右の例は見出しと本文で使用するフォントを逆にした例になります。改めて見ても読みづらい感じがします。
このように、読みやすさや印象を考えて、見出しと本文でフォントの種類を使い分けることも重要になります。
では、フォントのタイプや種類によってどのように印象が変わるのでしょうか。

左の例のように、フォントを筆で書いたような行書体に変えるだけで、グッと和の雰囲気が出ます。
真ん中の和牛特売セールはポップ体で文字が目に飛び込んできます。デザインは美しくすることも大切ですが、あえて少し違和感を出すことも重要です。「ん?なんだこれ?」と感覚に引っかかるデザインにすると、印象が強くなります。ポップ体のフォントとあえて斜めに配置することで、チープな雰囲気と違和感をわざと演出しています。
右の例ではゴシック体よりも筆記体とフォントにした方が雰囲気がよくなります。写真とフォントの組み合わせは非常に重要なので、どのフォントが適切かは慎重に考えた方がいいでしょう。このように、デザインの目的によってフォントを使い分けます。
フォントのデータ形式について知っておく
ここからはフォントのもつテクニカルな話になります。
フォントは、以前はドットで構成された「ビットマップフォント」が使用されていました。これだと、解像度の低い写真を引き伸ばしたときと同じように、拡大すると輪郭線がガタガタしてしまいます。現在では、数学的な計算で輪郭線を描くことで拡大縮小しても同じ形状・フォルムを維持することができる「アウトラインフォント」が主流となっています。
アウトラインフォントにもいくつかの種類があります。

「True Type」フォントは20年以上前から使われているので、種類が豊富にあります。「Open Type」フォントは比較的新しいため、種類は少なめですが、徐々に増え始めています。True Typeフォントに比べて機能的に優れており、日本語のフォント数も多く、漢字の数も多いです。また、WindowsとMacで互換性を保っています。そのほかに、専門の人が使用する「Post Script」という形式のフォントがあります。フォント形式はフォントデータファイルの拡張子で確認することができます。
Open Typeフォントの方がさまざまな機能がありデザインの幅を持たせることができますが、True Typeフォントは種類が多いのでフォントの選択肢は広がります。また、一部の古いアプリケーションではOpen Typeフォントに対応していない場合があります。デザインをする上で、データ形式が違うことを理解しておくと、フォントを操作していて上手くいかないことがあっても、データ形式の違いに注目することで問題の解決策が見つかるかもしれません。
最後に・・・

同じ文字でもフォントが違うだけで、読みやすさや印象が全く違って見えました。フォントの特徴やバリエーションを多く知っていることで、デザインの幅を広げ、ブラッシュアップすることができます。普段から気になるフォントをチェックして、自分のデザインの引き出しをどんどん増やしていきましょう。